記念特集 2-2-1 CPSY の64 年間

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Vol.100 No.10 (2017/10) 目次へ

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天野英晴 正員:フェロー 慶應義塾大学理工学部情報工学科

Hideharu AMANO, Fellow (Faculty of Science and Technology, Keio University, Yokohama-shi, 223-8522 Japan).

電子情報通信学会誌 Vol.100 No.10 p.1044 2017年10月

©電子情報通信学会2017

1.誕生と繁栄

 コンピュータシステム(CPSY)研専は,初めての実用的なプログラム格納形計算機EDSACが稼動してから僅か4年後の1953年に発足し,今年で64年の長い歴史を持つ.

 当初の本研専の目的は,今までなかった新しいシステムであるコンピュータをいかに作るかを明らかにすることで,国産コンピュータがそのれい明期を脱して基本技術を確立するのに大きな役割を果たした.1960~70年代に掛けて,日本企業の開発したメインフレームはその高い性能と信頼性により本家のIBMを脅かすに至った.この間,研専は,企業,大学間で活発に技術交換を行い,計算機技術の発達を支えた.情報処理学会が発足し,計算機アーキテクチャ研究会(ARC)が立ち上がったことで,コンピュータシステム関連の研究はますます盛んになった.

 1980年代前半には,他国の追従ではなく,全く新しいコンピュータを産み出すべく,第5世代コンピュータプロジェクトが始まり,コンピュータシステムの研究は絶頂期を迎えた.CPSY研専はARCと手を携えて,現在も活発に活動を続ける連合研究会SWoPP,国内の研究の最前線を結集した連合シンポジウムJSPPを立ち上げた.第5世代プロジェクトの終了後もRWCP,文部省重点領域などの超並列計算機プロジェクトに関する研究が活発に行われた.

2.危機と克服

 しかし,1990年代の後半になると,大規模な国家プロジェクトがなくなるとともに,マイクロコンピュータの性能爆発時代を迎え,コンピュータの研究はマイクロアーキテクチャが中心となった.このため,最先端の研究はARC,HPC,DCなど専門性の高い研究会に移り,研究対象が広くて曖昧な本研専での発表件数は減少した.2000年代になって国内の企業が次々と計算機開発から撤退し,2007年のリーマンショックで国内コンピュータ産業が大ダメージを受けると,発表件数はますます減少し,一時は他の研専との共催を頼りに,辛うじて発表件数を確保するまで落ち込んだ.

 しかし,CPSY研専はしぶとかった.コンピュータシステムはコンピュータの使われ方が限定されていると研究が広がらないが,コンピュータの利用形態が拡散するに従い,様々な技術が生まれ,情報交換する必要性が広がる.2010年代になって,クラウド,データセンター,ニューラルネットワーク,グラフィックスプロセッサ,アクセラレータ,スマートフォン,IoT,ビッグデータ処理など新しいコンピュータの使われ方が広がると,チップ,ハードウェア,コンパイラ,OS,アプリケーションを含めたシステムとしての研究の重要性が高まった.これらの分野の成長は余りにも激しく,いちいち専門の研究委員会を作るよりも,間口が広く,開放的なCPSY研専で発表を行った方が情報の発信と情報交換を効果的に行うことができる.更に,CPSY研専では,そこそこ高いレベルで信頼できる国際学会との連携を深め,本会論文誌の特集号を定期的に企画し,国際的な情報発信の場を確保した.それとともに,学生の最初の発表の場として広く機会を設けた.これらにより,2011年以降,発表件数は増加に転じ,毎年順調に増加している(1)

文     献

(1) 中島康彦,“コンピュータシステム研究会の近況と現場からのメッセージ,”信学情報・システムソサイエティ誌,vol.21, no.1,pp.12-13,2016.

(平成29年4月25日受付)

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(あま)() (ひで)(はる) (正員:フェロー)

 1986慶大大学院工学研究科博士課程了,工博,現在,同大学・理工・情報・教授.コンピュータアーキテクチャの研究に従事.


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