記念特集 2-2-14 高画質化の先へ

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Vol.100 No.10 (2017/10) 目次へ

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坂東幸浩 正員:シニア会員 日本電信電話株式会社NTTメディアインテリジェンス研究所

Yukihiro BANDOH, Senior Member (NTT Media Intelligence Laboratories, NIPPON TELEGRAPH AND TELEPHONE CORPORATION, Yokosuka-shi, 239-0847 Japan).

電子情報通信学会誌 Vol.100 No.10 p.1071 2017年10月

©電子情報通信学会2017

1.高画質化を実現した映像技術の進展

 映像技術分野では,映像の高画質化を実現すべく,技術開発が進み,撮像機器,表示機器,圧縮方式が発展してきた.高画質化は,空間解像度,時間解像度,色再現性,画素値深度等の観点から検討が進められた.その結果,次期放送方式では,8K,120fps,10bit/channel,広色域再現のスペックを実現するに至った.二次元ディスプレイに表示する映像としては,一定の高画質化を実現したと言える.

 こうした高画質化に伴うデータ量の増大に対して,効率的な蓄積・伝送に対応するために,映像符号化技術も進展してきた.MPEG/VCEGに代表される標準方式では,H. 261以来,動き補償予測と離散コサイン変換をベースとし,MPEG-2/H. 262,AVC/H. 264,HEVC/H. 265に至る過程を通して,着実な符号化効率の向上と,拡張フォーマットへの対応を実現してきた.

2.臨場感の実現に向けて

 前述の高画質化の取組みを通して,三次元空間の情報を二次元に縮退したディスプレイ上では,臨場感の再現に限界があることも分かってきた.つまり,前述の高画質化の要素を,視覚の検知限界まで引き上げたとしても,それだけでは,実物と区別の付かない映像を表示することは困難である.このため,高臨場感を有する映像の実現は,今後の重要な研究課題と考える.

 高臨場感映像の実現に向けた方向性としては,二通りに大別できると考えられる.一つは,映像信号を取得する立場での検討である.例えば,三次元空間の表現を目指す検討として,幾何情報と属性情報を用いるPoint cloud,光線の集合を用いるlight field等がある.また,Immersive media技術は,映像の表現方法を根本から見直し,高臨場感を目指す動きの総称として捉えられている.いずれも,可能性を秘めた技術であり,今後の進展に期待したい.

 もう一つは,映像を生成する立場での検討である.昨今の深層学習を中心とした機械学習の進展は,驚異的な速度で進んでいる.将来的には高臨場感の映像の生成を可能にする可能性もある.

 上述のいずれの方向性をとるとしても,高臨場感の代償として求められるデータ量の爆発的な増加に対応するためには,新しい映像信号に対応した符号化方式が必要になると予想される.高臨場感を実現する映像信号は,既存符号化技術が想定し得ない性質を持つ可能性が高く,符号化効率向上のためのブレークスルーが必要になると想定される.更に,映像の果たすべき役割が,時間と空間を超えたコミュニケーションにおける視覚情報の実現にあるとすれば,聴覚・嗅覚・味覚・感覚を表現する情報と連動した映像表現が重要となると考える.

 今後,コミュニケーションに真の臨場感を与え得る映像技術の実現が希求されていくことから,本会の果たすべき役割は,ますます重要になっていくものと考える.

(平成29年5月1日受付)

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(ばん)(どう) (ゆき)(ひろ) (正員:シニア会員)

 平14九大大学院博士後期課程了.同年日本電信電話株式会社入社.以来,高能率映像符号方式の研究開発に従事.現在,NTTメディアインテリジェンス研究所主任研究員.博士(工博).平27電気通信普及財団賞テレコムシステム技術賞等受賞.


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