解説 スポーツ映像解析及びその表現方法としての自由視点映像生成の紹介

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Vol.100 No.10 (2017/10) 目次へ

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解説

スポーツ映像解析及びその表現方法としての自由視点映像生成の紹介

An Introduction of Free-viewpoint Technology for Sports Video Representation and Analysis

野中敬介 内藤 整

野中敬介 正員 (株)KDDI総合研究所超臨場感通信グループ

内藤 整 正員:シニア会員 (株)KDDI総合研究所超臨場感通信グループ

Keisuke NONAKA, Member, and Sei NAITO, Senior Member (Ultra-Realistic Communications Laboratory, KDDI Research, Inc., Fujimino-shi, 356-8502 Japan).

電子情報通信学会誌 Vol.100 No.10 pp.1123-1128 2017年10月

©電子情報通信学会2017

abstract

 2020年のオリンピックを目前に控えた今,選手の育成強化などの目的から,スポーツ映像を対象とした解析技術へのニーズがより一層の高まりを見せている.この解析技術には,映像から得られる数値データの可視化や統計的分析を行いユーザに提示するものと,映像から構築される3D空間を任意の視点から観察することでユーザの直感的理解や臨場感体験を可能とするもの,といった二つのアプローチがある.本稿では,特に後者の手法について述べる.加えて,筆者らが開発した自由視点映像制作システム及び応用例を紹介する.

キーワード:自由視点映像,映像制作システム,オブジェクト抽出,オブジェクト追跡

1.ま え が き

 東京オリンピックを控え,近年ますますスポーツ競技の分析や理解のための映像解析技術へのニーズが高まっている.従来,スポーツへの応用を目指した様々な映像解析技術が提案されており,その目的や解析対象は多岐にわたるものの,多くの手法がデータ可視化や統計的分析に活用されている.以後,このような技術をデータ分析型映像解析技術と呼ぶ.

 一方で,映像の新しい表現手法として提案されてきた自由視点映像(1)と呼ばれる技術においても,選手の追跡などの映像解析技術を必要としており,要素技術としてのデータ分析型映像解析技術との共通点は多い.ここで,自由視点映像技術とは複数のカメラ映像から仮想的な空間の3D情報を生成し,カメラを置かない任意の視点からの映像を合成する技術である.この技術は,映像表現によって高い臨場感を体験可能とするものであると同時に,3D情報を映像として正確に表現することが可能である.その特徴から,この技術はエンターテイメントに限らず,スポーツ選手の直感的な映像理解や反復練習に応用することも可能である.以後,こういった新たな映像表現のための解析技術を臨場感体験型映像解析技術と呼ぶ.

 このように,スポーツを対象とした映像解析の応用は,その目的の観点から大まかに二つに分類することができる.筆者らはこれまで,臨場感体験を主目的とした自由視点映像生成技術の高品質化・高速化に取り組んできており,その取組みの一つとして,今回映像制作システムの開発を行った.そこで本稿では,スポーツ映像解析に関わる技術動向について概説した上で,筆者らの取り組んできた自由視点映像の要素技術,並びに制作システムをはじめとする応用例を紹介する.

2.スポーツ映像解析に関わる技術動向

2.1 データ分析型映像解析技術

 ここでは,多種多様なデータ分析型映像解析技術のうち幾つかを紹介する.まず,一人の選手の分析を目的とした角田らの手法(2)が提案されている.これは,近距離で撮影されたバドミントンのプレー映像を解析し,選手の姿勢や各部位の動きを可視化する手法である.

 次に,サッカーなどの複数人数で行われるチーム競技を対象とした技術を紹介する.藏野らはアメフトなどの複雑なプレーが頻発するシーンを対象として分析手法を提案している(3).この手法では,選手個別の追跡を行うのではなく映像全体のOptical Flow(用語)から大まかな人の流れを特徴量として利用し,プレーの分類や時間,ボールの軌跡推定を行うアプローチを提案している.

 高橋らは,チーム競技におけるチームの優勢度を分析する手法(4)を提案している.映像から追跡された選手個人位置をノードとしたネットワークを構築し,それに基づき選手をグループ化する.このグループ内の選手の数などのデータから,その瞬間のチームの優勢度を可視化する手法を提案している.ここで,いずれの技術においても,選手などのオブジェクト追跡は重要な要素技術であるということが見て取れる.これは次節にて述べる,臨場感体験型映像解析技術においても同様である.


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