電子情報通信学会 マイルストーン紹介

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Vol.100 No.12 (2017/12) 目次へ

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 2016年2月,本会の過去1世紀の偉業を列挙する委員会の委員長を務めよという大命が筆者に降下した.あっさり引き受けてしまったが,始めてみると,人間業でできる仕事ではないことを実感し始めた.マイルストーン選定委員会は,永妻,石川両調査理事ほかの理事たちや4ソサイエティの会長・元会長など総勢18名により,本会を舞台に,発表・討議された,基礎研究,実用化研究,サービス,概念提案などを対象に,偉業選定を開始した.

 2016年秋の名誉員の会で,「これまでの業績賞等にとらわれず,独自性の高い評価を行え」という激励も頂いたが,これは,個人的業績を重視する人,偉業は組織から生まれるものと考える委員など,メンバーの価値観は様々であるため,委員会としての主観的評価は,できることでもないし,できたとしても,差し控えるべきであろう.

 「永い時間軸の中で,客観性の高い評価はできるのか」と問われれば,これも,神の目を持たない限り難しい.100年前の業績と,数年前のそれとを,同じ識別眼で見ることは,人間にできることではない.ちなみに,IEEEのマイルストーン事業では,25年以上前の業績を評価している.そこで,

 (1) 本会で授賞された賞:業績賞,論文賞,功績賞

 (2) ノーベル賞や文化勲章など,学会外の賞

 (3) 委員会委員推薦,及び,公募推薦

をベースに,偉業をテーマごとにまとめ整理を行った.その際,「歴代會長所感―電氣通信學會創立二十周年を祝して一言を述ぶ」,「電子通信学会50年史」,「電子情報通信学会75年史」なども参考にした.

 業績賞は,1963年度(昭和38年度)以降,発表から3年以上経過した業績が評価されて54年間に294件授賞されている.論文賞は,年度ごとの評価であり,1940年度(昭和15年度)以降,500件以上の論文が授与されている.功績賞は,最も古く,1936年度(昭和11年度)に始まり,第1回は,八木秀次,梶井 剛両名誉員(共に故人)が受賞している.功績賞は,より長期にわたる視点から与えられるが,学会運営に対する功績に評価の重点が置かれるケースも少なくない.

 こうした状況の中で,業績賞が,学会の賞としては,基準となると考え,業績賞受賞者の業績は,全て偉業に含めることとし,テーマごとに分類整理した.例えば,第1回(1963年度)業績賞「C-12M同軸方式の実用化」などの同軸アナログ伝送方式の実用化は一つにまとめている.

 業績賞が始まる前の45年間の偉業は,功績賞,論文賞,上記の歴史書,委員・公募推薦書等を参考に精査して選定した.論文賞は多数に上るので,全てを対象に精査することは不可能であるが,例えば喜安善市賞のように,毎年,1件選ばれる優れた論文は,長期的評価は受けていないものの,偉業として選定した.その他の論文賞については,委員・公募推薦を選定する際,参考にした.

 さて,学会の賞は,功績賞の一部は別として,概して,短期的視野の中での評価である.これに対して,より長期的視野の中で,ライフワーク的偉業に与えられるノーベル賞や日本国際賞なども本会を活躍の場として生まれた誇らしい成果である.そこで,会員の代表的な受賞を調査し偉業を選定した.

 以上が,偉業選定基準の概要であるが,冒頭に述べた,「独自性の高い評価をせよ」というアドバイスも考慮し,名誉員や産官学の代表者等に集まって頂き,2017年3月29日,4月5日の2回にわたり,「100年の偉業を振り返り,未来に繋ぐ」と題して特別座談会(パネル討論会)を開催し,多岐にわたる有益な議論を頂いた.例えば,「日本人が生んだ優れた業績を,日本人同士が正当に評価しない傾向」が指摘された.この習性は,明治維新の後遺症かと思ったが,更に古く,平安時代,大江惟時が観月集に「遠き(漢詩)を尊び,近き(和歌)を卑しむは…」(大江惟時)と記しているところを見ると,我々の遺伝子にしみ込んでいるようにも思われ,今後,意識的改革に取り組むべき課題であろう.

 以上の偉業リストや,座談会速記録は,マイルストーン選定委員会が作成し,記念式典・祝賀会(2017年9月15日)で配布した冊子に記載してあるので,参照されたい.

http://www.ieice.org/jpn/100th/ieice_milestone_booklet.pdf

 終わりに,昼夜を問わずメールを飛び交わし,偉業選定に献身的に尽力された18名の委員や協力頂いた関係各位,そして事務局の皆さんに,心から感謝する次第である.


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