各種創立100周年記念事業 ソサイエティにおける創立100周年記念事業

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Vol.100 No.12 (2017/12) 目次へ

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基礎・境界ソサイエティ/NOLTAソサイエティ

100周年記念事業:
バンコクにおける「論文の書き方セミナー」と「100周年記念セレモニー」の報告

 電子情報通信学会においては,更なる国際化の必要性が指摘されていて,そのような状況下で基礎・境界ソサイエティ/NOLTAソサイエティにおいても独自の国際化への試みを行ってきている.

 NOLTAソサイエティは英文論文誌NOLTAジャーナルの発行,国際会議NOLTAの運営,Webページの英語化等,国際化を前面に出して活動を行っている.基礎・境界ソサイエティにおいても,国際化を図るための活動を継続して行ってきていて,その象徴的な活動として2011年から開始した「国外でのジャーナル論文の書き方セミナー」と2014年からスタートした「国外におけるIEICE-ESS論文編集委員・査読委員養成セミナー」を挙げることができる.これらのセミナーは北海道大学教授の宮永喜一氏,大阪大学教授の尾上孝雄氏と東京都市大学教授の田口 亮氏が主に担当し,この記念事業の開催前の時点で,「論文の書き方セミナー」は4か国(タイ,ベトナム,フィリピン,マレーシア)で合計17回開催し,延べ参加者人数は1,563名に達し,「編集委員・査読委員養成セミナー」は2か国(タイ,フィリピン)で合計4回開催し,延べ参加者人数は129名となっている.このように基礎・境界ソサイエティの一つの象徴的な国際化に対する活動との位置付けから100周年の記念事業として「論文の書き方セミナー」と「100周年記念セレモニー」を2017年10月20日(金)にタイ,バンコクで開催するに至った.

 「論文の書き方セミナー」は,第1回目の「論文の書き方セミナー」(2011年8月3日)を開催したタイのチュラロンコン大学において開催した.この日も50名以上の学生が本セミナーを受講し,質疑応答も活発に行われ活気のあるセミナーとなった.この記念すべき節目において「論文の書き方セミナー」も新たなるスタートを切ったと言える.

 その後,会場をデュシタニ バンコクに変えて「100周年記念セレモニー」を開催した.「100周年記念セレモニー」は本会のバンコク・セクションの支援を受けて実現の運びとなった.この誌面を通じて,セクションChairのProf. Supavadee Aramvithに厚く御礼申し上げる.

 セレモニーのスタートは基礎・境界ソサイエティの今井 浩会長の挨拶で,本会の沿革,組織と特に国際活動に対する説明を交えた挨拶がなされた.次に,バンコク・セクションChairのSupavadee Aramvith氏から,バンコク・セクションの活動状況の説明を交えた挨拶がなされた.更に,基礎・境界ソサイエティとシスターソサイエティの間柄である電子・情報・通信分野のタイの学会であるECTIの会長Prof. Somsak Choomchuayから100周年に対する祝福の挨拶がなされた.

 本セレモニーのメインがパネル討論会であり,進行役を大阪大学の尾上氏が務め,パネラーは,ECTI論文誌Editor-in-ChiefのChiranut Sa-Naiamsak氏,フィリピン大学のRhandley Cajote氏,ベトナム国家大学ホーチミン市校のBui Huu Phu氏と北海道大学の宮永氏の4名である.海外の3名のパネラーの方々は,これまで「論文の書き方セミナー」のホストを務めた経験を持っている.そして,基礎・境界ソサイエティの国際化に対する活動に理解を示している方々であり,またその活動の支援をして下さる方々である.

 海外のパネラー3名からは自らが所属する機関(学会,大学,研究所)の国際活動や,これまでの,本会との関わり等について紹介がなされた.宮永氏からは,基礎・境界ソサイエティの国際化の活動の包括的な説明がなされた.更に,今後の新たなる展開に関しての提言がなされた.(シスターソサイエティを基軸とした国際活動の活性化や新しいセミナー「国際会議の企画・運営の仕方セミナー」の実施等.)

 パネル討論では学生に対する学会の在り方,産業界との関わりの在り方やIEEEの活動との比較等について意見交換がなされた.本会が海外の組織(学会等)と共催で国際会議,セミナーを企画・開催することの重要性,学会の資産(論文,国際会議録)のデータベース化とその公開の重要性,更には,国際会議等で積極的に産業界へアプローチすることの重要性が確認された.そして,次世代のアクティビティの高い研究者を育成することが必要であり,学生の成長に対して良き環境を提供するための国際活動の活性化が重要であることが指摘された.

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 セレモニーには歴代のバンコク・セクションChair,ECTIの幹部やこれまでの本会主催の国際会議で御尽力された方々等を招待し格調高いものとなった.次の100年に向け良き船出になったと考えている.

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通信ソサイエティ

<通信ソサイエティにおける研究会制度の改革>

 創立100周年記念となる本年度は,通信ソサイエティ(通ソ)の研究会は,その運営を大きく変える年となった.

 通ソには,21の研究専門委員会(研専),7の特別研究専門委員会(特別研専,2017年6月1日から時限研専から改称)があり,それぞれ研究会を開催している.特に,研専が開催する第一種研究会では,通ソ全体で毎年2,800件近くの発表があり,通ソの活動の大きな柱となっている.研究会は,本会の初期の頃から開催されていたようで,全体運営は,1941年からは技術委員会,1985年からは研究組織委員会が担い,1995年には各ソサイエティに責任が移されている.通ソでは,2005年から研専運営会議が全体運営を担当している.

 通ソの第一種研究会は非常に活発な活動であるが,主な収入源である技術研究報告(技報)の売上げは,毎年減少を続けている.将来的には研究会の運営が困難になると考えられるため,通ソでは大きな制度変更を行った.

 新制度は,技報は冊子体の発行をやめ電子版のみとする,研究会の参加を有料とする,の2点を柱としている.技報を電子版のみとするのは,多くの学会の出版物が電子版だけになっていること,利用者の利便性が向上すること,更には印刷の廃止で大幅なコスト削減が図れるためである.長い歴史を持つ冊子体を廃止することについては,これまで長い間議論があり様々な意見があったが,研究会制度を長く継続するための改革として,今回大きな決断をした.また研究会への参加は長年無料とされてきたが,参加者にも研究会を支えて頂くとの考えの下,参加費制を導入した.

 研専運営会議で検討を重ねた結果,新制度は次のようにした.

 (1) 研究会会場で冊子体技報を配布しない.代わりに「技報オンサイトビュー」を通じて電子版をダウンロードして頂く,

 (2) 研究会参加者には参加費をお支払い頂く.参加費が割引となる年間登録制度も提供する.

 (3) 発表する方には掲載料を負担頂く.

 上記は,本年度(2017年4月)から通ソに属する全ての第一種研究会で実施している.

 (4) 来年度(2018年4月)からは,通ソの技報は冊子体では発行・販売せず,代わりに電子版の「技報アーカイブ」サービスを提供する.

 今回の新制度は,2013年度に通ソで行った研究会の在り方議論を端緒として,2014年度の研専運営会議での研究会の在り方検討,2015年度の制度設計,2016年度のトライアルを経て,本年から本実施となった.ここに至ったのは,研専運営会議メンバーによる深い議論と制度設計,辻岡哲夫氏(阪市大)による技報オンラインの迅速な改修があったからこそである.その貢献に改めて感謝したい.

 他ソサイエティにも同様の制度の導入が広がっており,本制度が,研究会が本会の活動の柱であり続けるための基盤となることを願っている.

<通ソ編集会議における創立100周年記念事業>

 通ソ編集会議では,創立100周年記念事業として,和・英論文誌における「100周年記念特集号」,及び「論文の書き方講座の海外展開」を企画した.

 和文論文誌100周年記念特集では,通ソ分野に関わる業績賞受賞研究を対象に,編集委員会で慎重に選んだ12件について,新たに執筆頂いた論文を掲載している.これらの論文全てにおいて,賞の対象となった研究成果を分かりやすく紹介頂くとともに,同成果や関連技術の今後の展望についても記載頂いた.研究入門者から熟練研究者まで幅広い読者層に有益な特集となっており,100周年記念にふさわしい内容であると確信している.

 英文論文誌では,2017年9月に100周年記念特集号「the Past, Present, and Future of Communications Technologies in the IEICE」を発行し,過去・現在・未来の通信技術に関する魅力的で示唆に富んだ全18件の招待論文を世界に向けて発信した.各招待論文(論文11件,サーベイ論文7件)は通ソの研究専門委員会から推薦された各分野を代表する研究者・技術者に御執筆頂き,特集号編集委員会によって編集作業が行われた.本号に掲載された招待論文が,本会及び情報通信技術分野の次の100年を支える礎となり,新たな研究開発及び人材育成の推進に多大な貢献をもたらすことが期待できる.

 通ソでは,総合大会とソサイエティ大会において,若手研究者向けに「論文の書き方講座」を開催している.創立100周年記念事業として,海外,特にアジア地域の優れた研究を掘り起こし,論文投稿してもらうことを狙い,この講座を海外でも開催することを計画している.具体的には,2017年10~11月にタイ・プーケットで開催されるInternational Symposium on Antennas and Propagation(ISAP2017)において,この講座を実施すべくその準備を進めている.

 また,近年の大きな事業として,通ソが発行する英文論文誌のLetterカテゴリー廃止に併せて,2012年6月に査読付き英文オンラインジャーナルであるIEICE Communications Express(ComEX)を創刊した.迅速な判定通知を編集方針としており,今年度実績では,投稿受付から判定結果通知まで平均24日となっている.最近の話題としては,学会創立100周年を迎える今年,クラリベイト・アナリティクス(旧:トムソン・ロイター)が地域的に重要なジャーナルや,新しい注目分野のジャーナルをカバーするコレクションとして選定するEmerging Sources Citation Index(ESCI)にComEXが収録されることとなった.

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エレクトロニクスソサイエティ

本会100周年記念事業としてのエレクトロニクスソサイエティでの編集出版の取組み
――和文論文誌C記念特集号の御紹介――

 エレクトロニクスソサイエティでは本会創立100周年記念事業の一環として,和文論文誌Cにおいて「学会創立100周年記念論文特集」を組み,J100-C巻10号に掲載した(2017年9月12日公開).特集の内容は,通信分野の発展を支えてきた重要なエレクトロニクス技術に関する技術解説と研究開発逸話等を含めたレビュー論文を集めたものである.言うまでもなく本会が扱う情報通信分野においては,情報そのものを取り扱う研究と,情報を伝えるための通信の研究,そして両者に必要なハードウェア(コンピュータや通信機器とそれらを実現する部品や素子)の研究が必要である.エレクトロニクスはこれらのハードウェアの実現に不可欠なものであり,日本では活発に研究開発が行われ,日本のお家芸とも言われてきた.しかし,近年,産業構造の変化に伴い,残念ながらエレクトロニクスの研究者を志望する学生の数が徐々に低下している.一方で,今後の情報化社会の更なる進展を考えると,通信ネットワークにおける信号の伝送速度を飛躍的に向上させる必要があり,そのためのエレクトロニクス技術の研究開発は,今まで以上に期待されているのである.

 そこで,本特集においては,エレクトロニクスに関係する過去の重要な技術を12件ピックアップし,それぞれについて重要な業績を上げられた研究者にレビューしてもらい,若手研究者や将来この分野に進むかもしれない学生諸君に技術の基礎と研究の面白さを伝えることを目的とした.そのため,単なる技術解説にとどまらず,競合した技術との比較や,開発の秘話/苦労話,研究者個人としての研究に関する思いなども記載して頂いた.和文論文誌のため我々の母国語である日本語で執筆されているので,苦労の度合い,成功時の喜びなどのニュアンスや研究者の感情まで伝わるのではないかと期待している.以下に,論文題目と著者名(敬称略)を記す.

 (1) マイクロ波半導体回路研究の黎明期―立体回路から平面トランジスタ回路へ―
(本城和彦・高山洋一郎)

 (2) マイクロ波・ミリ波低損失材料評価技術の開発とフィルタ設計への応用
(小林禧夫)

 (3) 超伝導技術に基づく高性能マイクロ波フィルタ―超伝導エレクトロニクスの進展を顧みて―
(大嶋重利)

 (4) 光ファイバ開発の黎明期
(伊澤達夫)

 (5) 動的単一モードレーザの開拓―大容量長距離光ファイバ通信用の半導体レーザ―
(末松安晴)

 (6) 通信用リレー接点の変遷と制御用リレーへの展開
(青木 武)

 (7) HEMTのR & Dはいかに実行されたか
(三村高志)

 (8) 高誘電率酸化タンタル膜の低消費電力高集積DRAMへの適用
(神力 博)

 (9) 知能集積システムの萌芽―知能を集積回路に組込む―
(亀山充隆)

 (10) 垂直磁気記録とビッグデータ時代
(岩崎俊一)

 (11) イメージセンサ技術
(須川成利)

 (12) 液晶ディスプレイ―セレンディピティと科学的洞察の歴史―
(苗村省平)

 特集の内訳はマイクロ波通信用デバイスに関する論文が3編,光通信用のファイバと光源に関する論文が2編,電子部品と半導体素子/集積回路に関する論文が4編,各種端末装置に関する論文が3編である.情報通信に関わる全てのエレクトロニクス技術を紹介できたわけではないが,主立ったものは網羅している.学生や若手研究者の温故知新の一助となるだけでなく,全年代の研究者が技術の流れを俯瞰したり,大学教員が講義をする際の参考になれば幸いである.

 最後に,御多忙にもかかわらず執筆を快くお引き受け頂いた著者の皆様に,この場を借りて深く感謝の意を表したい.また,特集を企画するにあたり協力頂いたエレクトロニクスソサイエティの研究専門委員会の方々,本特集の編集委員会の委員の方々と校閲者の方々に感謝する.

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