委員会における創立100周年記念事業

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Vol.100 No.12 (2017/12) 目次へ

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出版委員会

バーチャル図書館の新規開設
――絶版書目から本会分野の足跡をたどる――

 本会では,電子工学及び情報通信に関する学問,技術の標準となる参考図書を編集し,学生,実務者並びに研究者に供するため,昭和3年以降,通信工学通俗叢書,実用通信工学叢書,電話関係回路図集等のシリーズを出版してきた.その後は,本会が対象とする分野の拡大,技術の発展に伴い,多数の単行本を出版して,本会関連の研究活動を支えてきている.

 上記単行本の出版を主な所掌とする出版委員会では,創立100周年記念事業として,本会が専門とする分野の発展の足跡をたどり,技術の歴史を未来に伝えること,及び絶版書目の保存を目的として,本会HP上に「バーチャル図書館」を設置することとし,検討を行った.

 その結果,第一弾として公開するコンテンツは,昭和初期に発行された単行本「通信工学通俗叢書」シリーズに決定した.ファイル形式はPDF形式,各ページの画像をスキャンしたものとし,準備期間中に,作業上簡単な表紙・奥付画像のみを撮影して公開することから始めた.

 この「通信工学通俗叢書」シリーズは,絶版書目であり著作権は著者本人に帰属している状態であるため,弁護士とも相談の結果,会誌会告欄及び本会HP上において,公開の方針及び本会への著作権委譲のお願いを掲載した.期限である平成29年9月10日までに特に申出がなかったため,9月15日から準備の整った書目の一般公開を開始している.

 現存している叢書シリーズは,劣化が著しく,単行本を一度裁断してしまうと復元(製本)は非常に困難であり,また,汚れが激しい等の問題もあった.そのため,実際の作業は保管用・裁断用として書目につき各2部が本会に保管されているものから着手した.

 なお,本会編集理事であり,出版委員会副委員長である高田潤一氏の御協力により,別途「通信工学通俗叢書」シリーズ全書目を入手することができ,無事シリーズ全書目公開のめどがついた.ここに感謝申し上げる次第である.

 現在,コンテンツとしては「通信工学通俗叢書」シリーズに限られているが,今後も随時収録コンテンツの充実を図っていく予定である.この「バーチャル図書館」は,オープンアクセスでどなたでも御覧頂くことが可能であるので,是非一度訪問して本会分野の足跡をたどって頂きたい.

 バーチャル図書館:
http://www.ieice.org/jpn/books/virtual-library.html

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創立100周年記念事業実行委員会

創立100周年記念
特別パネルディスカッションの実施について

 2017年9月に東京都市大学で開催されたソサイエティ大会にて,特別パネルディスカッション「電子情報通信 次の百年の夢」を開催しました.この企画では,五つのソサイエティの会長・副会長に,次の100年間に向けてそれぞれの分野がどのように変化していくのかを話して頂きました.

 初めに,各ソサイエティの今後100年の姿についてそれぞれ講演がありました.

 基礎・境界ソサイエティ(ESS)の今井浩会長からは,次の100年を語るには過去の100年を認識する「温故知新」が必要との話がありました.シャノンの標本化定理とニューラルネットワークとの関係を例に挙げ,過去の研究成果は現在の様々な分野で活用されていて,未来の研究も現在を含めた過去の様々な研究の下に成り立つという指摘が興味深く聞こえました.最後に,ESSの目指すところは普遍の真理の追究,基礎原理の探究の歩みを止めない覚悟であると締めくくられました.

 NOLTAソサイエティ(NLS)の池口徹会長からは,NOLTAソサイエティの生い立ちと,重要なキーワードである非線形について,蔵本由紀先生の「非常に大きなスケールの複雑世界を横断して記述するための普遍的な概念」という研究の根源について紹介がありました.今後の大きな発展分野の一つとして脳科学を取り上げ,脳の活動が極めて低消費エネルギーなことから,そのメカニズムを解明することで今後大幅な計算能力の向上が期待され,そのためには,科学と脳医学といった異分野の交流が大切と締めくくられました.

 通信ソサイエティ(CS)の守倉正博会長からは,ICT技術が与える影響力として,社会問題解決という側面がある一方,光と影があり,急激な破壊的進歩につながる側面があること,ビジネスモデルが一旦成り立てば,いずれかの方向へ技術が独り歩きしていくこと,逆に,技術が活用されるためには,ビジネスモデルが重要であることなどの指摘がなされました.また,破壊的進歩には,異分野との融合が大事で,様々な研究者の交流が必要,特に今後は女性研究者の活躍を期待していると締めくくられました.

 エレクトロニクスソサイエティ(ES)の植之原裕行会長は,今の世代の研究者には,将来の世界が見通せないときでも,その時代を支えていくであろう技術を追求していく姿勢が大事であり,その結果,10年後,20年後の技術を中心に100年後もきっとその技術の延長線上にあるとの考えを述べられました.また,超スマート社会(Society 5.0)を実現する技術において,エレクトロニクスの技術は様々な応用技術を支える基盤技術として役割は重要であるとの意見も述べられました.

 情報・システムソサイエティ(ISS)の斎藤英雄副会長は,ISSは言語,画像,データなどの情報の中身をどう扱うか,を主眼にしたソサイエティであり,今後も扱うデータの種類,量は飛躍的に延びて行き,それに合わせて技術も変化,発展していくとの予想を示されました.例として,人工知能の進化について述べ,これまでの人間が道具として利用する技術から,システムと人間の間のインタフェースを拡張・充実することで人間とシステムが融合し,更に人間が幸せになっていくという予想が示されました.

 引き続き,創立100周年記念事業実行委員会企画WGの山尾泰主査の司会にて,全講演者によるパネルディスカッションを行いました.

 まず会場から,次世代の技術例として「量子コンピュータ」「超伝導コンピュータ」についての現在の実用化レベルについての質問があり,特化した分野での活用については進んでいるが,汎用的な利用面については,まだまだ解決しなければならない課題があるとの回答がありました.

 続いて,50年後,100年後に活躍する若い人に対する学会としての活動について質問があり,学会のそれぞれのレベルで,小学生から高校生まであらゆる世代を対象とした「科学教室」を開催している旨が紹介されました.この中で,実際に手で触れて体感してみること,より若い世代がわくわくする体験を提供することが必要との意見が出されました.

 また,今後,どのような異分野との融合が望まれるか? という質問に対し,ソサイエティ間での連携には現在既に取り組んでいるとともに,今後は,医療や農業など他学会との連携も重要であるとの意見がありました.ただし,異分野との融合では,単に技術を持っていって使って下さいということでは成功せず,研究者,技術者がそのフィールドに一緒に入り込んで,同じ体験をしながら新たな技術を創造していくことが重要であるとの意見も出されました.

 最後に,司会の山尾主査が,100年後もICTが世の中を支えるためには,現在の技術を次世代にどうやって引き継いでいくか,また身の回りの空気のように当たり前になったICT技術がどんなに人のために役立っているかということをいかに若い人に知らしめていくのかも大事であり,それをどのように実行していくかを今後も皆で考えていくということを確認して,このシンポジウムを締めくくりました.

〈おわりに〉

 「次の百年の夢」といった大変難しいテーマの中,御講演頂きました各ソサイエティの会長・副会長,及び,当日会場にて議論を頂きました50名を超える参加者の皆様に改めてこの場をお借りして感謝を申し上げます.

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電子情報通信学会創立100周年記念
アマチュア無線特別局運営委員会

創立100周年記念アマチュア無線特別局
8J100EICの運用

1.はじめに

 電子情報通信学会が発足した1917年当時から,アマチュア無線家は無線通信技術の普及,科学技術分野の人材育成に貢献してきました.現在も多くのアマチュア無線家が電子情報通信技術の研究開発に活躍しています.

 そこでアマチュア無線を愛好する本会会員有志が,創立100周年を記念するアマチュア無線特別局を開設・運用して国内外のアマチュア無線家に本会の存在をアピールし,ひいては無線通信技術の普及に寄与したいと考えました.この活動は本会創立100周年記念事業の一つとして承認され,2016年11月に有志が運営委員会を組織し,開局準備に着手しました.

2.特別局のコンセプトと設置

 アマチュア無線特別局の運用にあたっては,本会の事業らしい技術的特徴のある試みができればと考えていました.そこで専用ソフトウェアを用いてインターネット経由でどこからでも無線設備を遠隔操作できるリモート運用を取り入れることを検討しました.リモート運用はこれまで個人が別宅の無線設備を操作する場合等に行われていましたが,多数の運用者がいる特別局ではまず例を見なかった新しい試みです.

 本無線局は日本電信電話株式会社(NTT)の協力によりNTT武蔵野研究開発センタに無線局の設置場所とインターネット回線を用意頂き,同所のアマチュア無線クラブのアンテナ設備(図1)をお借りして,無線局とそのリモート運用環境を構築しました.2017年7月7日には本局の免許人である(一社)日本アマチュア無線連盟(JARL)の高尾義則会長をはじめ多くの関係者をお招きして同所にて開局式典を挙行し,コールサイン8J100EICで同日から運用を開始しました(図2).

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3.全国の科学技術関連イベントでの移動局運用

 本無線局は全国各地で運用可能な移動局免許も得ています.運営委員会メンバの協力を得て,「学都仙台・宮城サイエンス・デイ2017」,「NICT未来ICT研究所施設一般公開」で本局の公開運用を行い,本会をアピールしました.

4.ハムフェア2017(9/2~3)でのリモート運用

 「アマチュア無線フェスティバル(ハムフェア)」は例年3万人以上が来場する日本最大のアマチュア無線イベントです.本運営委員会は無線通信技術に関心が深い参加者が集まるハムフェアを絶好の機会と捉え,リモート運用を体験できるブースを出展しました.展示は注目を集め,来場者22人がリモート運用を行い,通常の運用と遜色ない音質と操作性に驚いていました(図3).

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5.ソサイエティ大会(9/12~15)でのリモート運用

 本会会員には多数のアマチュア無線愛好家がいることから,東京都市大で開催されたソサイエティ大会でも本局のリモート運用ができるブースを設置しました.41人が本企画に来場しました.

6.今後の予定

 アマチュア無線を通じた科学技術普及への貢献として,本無線局と交信し,かつ本会「子供の科学教室」活動に寄付を行ったアマチュア無線家を対象に,感謝状・感謝盾を贈呈する準備を進めています.

 2018年3月20~23日に東京電機大で開催される総合大会ではリモート運用を行うブースを設ける予定です.

 本局は,9月末時点で国内外約3,000のアマチュア無線局と交信しました.免許期限である2018年3月末まで活動を継続し,本会のアピールを続けていきます.

(三木哲也 高橋真之 滝澤 修 小谷元史 大家万明)

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