小特集 6. 無線トモグラフィーと位置推定問題への応用

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数理的手法の多様化・深化による通信システムへの新たなアプローチ

小特集 6.

無線トモグラフィーと位置推定問題への応用

Wireless Tomography and Its Application to Localization

松田崇弘 原 晋介 小野文枝 滝沢賢一 三浦 龍

松田崇弘 正員:シニア会員 大阪大学大学院工学研究科電気電子情報工学専攻

原 晋介 正員 大阪市立大学大学院工学研究科電子情報系専攻

小野文枝 正員 国立研究開発法人情報通信研究機構ワイヤレスネットワーク総合研究センター

滝沢賢一 国立研究開発法人情報通信研究機構ワイヤレスネットワーク総合研究センター

三浦 龍 正員 国立研究開発法人情報通信研究機構ワイヤレスネットワーク総合研究センター

Takahiro MATSUDA, Senior Member (Graduate School of Engineering, Osaka University, Suita-shi, 565-0871 Japan), Shinsuke HARA, Member (Graduate School of Engineering, Osaka City University, Osaka-shi, 558-8585 Japan), Fumie ONO, Ryu MIURA, Members, and Kenichi TAKIZAWA, Nonmember (The National Institute of Information and Communications Technology, Yokosuka-shi, 239-0847 Japan).

電子情報通信学会誌 Vol.100 No.4 pp.287-292 2017年4月

©電子情報通信学会2017

abstract

 無線トモグラフィーは,三次元空間の領域に対し,無線信号を様々な角度から照射して測定することにより,領域内部の信号減衰の空間分布を推定する手法である.本稿では,近年注目されているスパースベクトルの再構成手法である圧縮センシングを,無線トモグラフィーに適用する手法について述べるとともに,無線トモグラフィーを用いた室内位置推定技術への取組みについて紹介する.

キーワード:無線トモグラフィー,圧縮センシング,スパースベクトル,位置推定

1.は じ め に

 トモグラフィー(Tomography)とは,物体に対し外部から信号を照射し,その応答より物体の内部構造,状態等を推定するための手法である.無線トモグラフィー(Wireless Tomography)は,RF(Radio Frequency)トモグラフィー,無線トモグラフィックイメージング(Radio Tomographic Imaging)等とも呼ばれ,通信に使用される無線信号を利用したトモグラフィー技術である(1).CT(Computerized Tomography)等の医療機器とは異なり,情報通信を行いながら内部構造を推定できることが特徴である.したがって,この特徴を利用し,火災が発生している建物内に救助隊員が突入する際,通信を行うと同時に建物内の構造推定や建物内での救助隊員の位置推定精度を向上させるための手法として検討されている.

 無線トモグラフィーの目的は,推定したい領域を複数のブロックに分割し,各ブロックでの無線信号の減衰量を表す減衰マップを推定することである.領域外部に設置された送受信機間で得られる観測信号の減衰量と減衰マップの関係は,線形連立方程式として定式化され,これを解くことにより減衰マップを推定することができる.このとき,減衰マップにスパース性を仮定することにより,圧縮センシングを用いた無線トモグラフィーを実現することができる.圧縮センシング(2)は,劣決定系の線形逆問題の解を求めることを可能とする理論であり,無線トモグラフィーに適用した場合,少ない観測信号で効率的に減衰マップを推定することができる.

 本稿では,三次元構造の領域内の減衰マップを推定するための無線トモグラフィーについて検討する.減衰マップを3階テンソルにより表現し,テンソル型の圧縮センシングを用いた無線トモグラフィーについて解説する(3),(4).また,無線トモグラフィーの受信信号強度(RSS: Received Signal Strength)に基づく位置推定手法への適用についても述べる(5)(7)

2.無線トモグラフィー

 図1に二次元領域の減衰マップを推定するための無線トモグラフィーを示す.図に示すように,領域外部に無線端末を設置し,端末間で信号を送受信する.領域内部は,領域の大きさよりも小さなブロックに分割され,無線端末間で観測された信号の減衰量から,各ブロックにおける単位伝搬距離当りの減衰量が推定される.

fig_1.png


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