小特集 2. サービス・製造プロセス分析のための脳活動センシング技術

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サービス・製造プロセス分析のための人間センシングと可視化

小特集 2.

サービス・製造プロセス分析のための脳活動センシング技術

Sensing Brain Activities for Neuro-aided Product/Service Design in Real World Environment

岩木 直

岩木 直 正員 国立研究開発法人産業技術総合研究所自動車ヒューマンファクター研究センター

Sunao IWAKI, Member (Automotive Human Factors Research Center, National Institute of Advanced Industrial Science and Technology, Tsukuba-shi, 305-8566 Japan).

電子情報通信学会誌 Vol.100 No.4 pp.301-305 2017年4月

©電子情報通信学会2017

abstract

 近年の脳活動計測技術や生体反応計測技術の発展により,‘ひと’の意思決定や価値判断に関わる認知プロセスの解明が進んでいる.それに伴って,脳活動や生体反応計測データを製品の設計や評価に活用するニューロマーケティング分野など,生体情報・脳活動情報分析結果の産業応用に注目が集まっている.本稿では,主な脳活動の計測技術の原理や特徴を概観し,実際の問題に適用した事例を紹介する.

キーワード:脳活動計測,Virtual Reality,脳波,MRI,NIRS

1.は じ め に

 近年,脳認知科学的手法を製品やサービスのデザインへ応用する取組みが注目を集めている.この背景には,‘ひと’の認知や行動は従来の経済学・マーケティング理論で仮定されてきた論理的合理性が成り立たない場合が多いことが,特に1990年代までの心理学や行動経済学分野の研究によって明らかになり(1),それらを前提とした合理的モデルでは実社会での我々の行動を説明できないことが指摘されたことが挙げられる.一方で,様々な脳活動をはじめとする生体情報や認知機能の計測技術の実用化と研究機関・病院等への計測機器の普及が進んでおり,対象とする脳機能や用いる実験課題,対象者群など必要に応じて最適な計測技術の組合せを選択できる環境が整いつつある.このような,脳活動の計測を製品やサービスのデザインに活用することにより,アンケートやインタビューなどの言語的手段では得られない,意識に上らないけれども価値判断や意思決定に影響を与える‘ひと’の知覚・認知の変化を定量的に評価することができるのではないかという期待が高まっている.

 下記では,まず現在実用化されている脳活動や認知機能の計測技術についてそれぞれの特徴を解説するとともにそれらの適用事例を紹介する.

2.様々な脳活動の計測技術

 ‘ひと’の脳の働きを計測する技術の発展は目覚ましく,1990年代半ばまでに,様々な原理に基づく‘ひと’脳の非侵襲的なイメージング手法が提案されてきた.本稿では,特に脳認知科学的研究でよく用いられており,実社会での‘ひと’の認知プロセスの評価にも広く応用されている,脳波,機能的MRI,近赤外分光法について紹介する.

2.1 脳波

 脳内の神経ネットワークで行われる情報処理に伴う小さな電流(神経電流)は,頭皮上に電位分布を生成する.この,マイクロボルト(math)オーダの電位分布のミリ秒単位の変化を計測したものが脳波(EEG: Electro-EncephaloGram)である.脳内の神経活動が生成する電気的信号を直接計測するもので,1ms程度の時間的解像度を持つとともに,完全な非侵襲計測であるという利点を持つ.一方で,頭皮上に配置された電極で計測されたEEGの空間分布から,脳内の神経電流の空間分布を再構成する問題は,一意な解を持たない不良設定(ill-posed)な逆問題(2)であり,数学的にあるいは生理学的に設定される制約条件の下でのみ解を求めることができる.また,頭皮上における電位の分布は,電流が分布する領域の導電率の分布に大きな影響を受けるため,高解像度MRIデータの画像処理に基づいた,脳―頭骸骨―皮膚の導電率の比較的精密なモデリングが必要で,頭皮上で計測されたEEG波形の発生源を突き止めるのは一般には難しい.


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