解説 高周波同軸コネクタの標準化動向

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解説

高周波同軸コネクタの標準化動向

Standardization Trend of High-frequency Coaxial Connectors

堀部雅弘

堀部雅弘 正員 国立研究開発法人産業技術総合研究所計量標準総合センター

Masahiro HORIBE, Member (Research Institute for Physical Measurement, National Institute of Advanced Industrial Science and Technology, Tsukuba-shi, 305-8563 Japan).

電子情報通信学会誌 Vol.100 No.4 pp.312-316 2017年4月

©電子情報通信学会2017

abstract

 高周波同軸コネクタは,高速信号入出力インタフェースとして通信機器や放送機器,測定機器に広く用いられている.主要な規格としては,IEC,IEEE及びMILがあり,また日本では,JIS規格などの各国・地域での規格,HDMIなどの特定の機器利用を目的とした業界団体規格がある.本稿では,各種規格の性質や制定までの工程の違いや国際標準化と知財の戦略について解説する.また,4K/8K関連機器向けのコネクタや光モジュール等の高速インタフェース向けコネクタ,携帯基地局向けの多極コネクタや,高周波化を目的とした0.8mmコネクタ等の標準化動向について解説する.

キーワード:高周波コネクタ,国際電気標準(IEC),IEEE規格,オープン・クローズ戦略,4K/8K放送,光通信,携帯基地局,高周波計測

1.は じ め に

 高周波同軸コネクタは,高速な電気信号を機器間で送受信するために,インタフェースとして使われる.利用される分野に制限はないが,携帯電話などが普及する以前は,特定の分野での利用に限られていた.その主な分野が航空・宇宙・軍事といった分野や業務用無線などであり,レーダ機器などは代表的な機器であると言える.そのため,高周波コネクタ分野では,Military Standard(MIL規格)において,性能等の仕様が定められ,米軍等で調達の際の仕様となっている.これまでに,携帯電話に代表されるように,高速の信号を利用したサービスは身近なものとなっており,現在では,主な施設でも無線LANが利用できる状況になっている.

 現在,第5世代携帯電話や4K/8Kスーパーハイビジョン放送の実運用の開始が推進されており,取り扱うデータ量や信号速度も高速化している.更には,光通信の大容量化に伴い光モジュールにおいても,信号変調用の電気信号の高速化で,電気信号のインタフェース,つまり高周波コネクタへの要求も厳しくなっている.更に,現在では,通信機器の小形化や設置台数の増大に伴い,作業性の観点から,同軸ケーブルを複数本束ねて一度に接続ができるマルチコネクタや,更には,光通信システムとの一体化による光ファイバケーブル及び,駆動用の電源ケーブルも併せて接続できるマルチコネクタも登場しており,それらの標準化も複数の技術委員会が連携する形で検討が始まっている.現在の国際標準化の活動では,単独の技術委員会(TC)で審議できない関連技術分野の委員会と連携すべき提案が多くなっている.そのため,このような動向を見据えて,多岐にわたる技術への対応,製品化の計画や市場獲得の戦略も併せて標準化を推進する必要がある.

 また,技術の進展に加え,ビジネスのグローバル化が急速に進んだことで,コネクタのようにどのメーカの製品であっても勘合ができるといった,ユーザの立場に立った利便性のための共通化などの公共性の高い国際標準化の活動が重要性を増している.一方で,個々の企業のビジネスでも物を作って売る時代から知財戦略が重要視される時代となってきている.

 このような状況から,昨今の国際標準化では知財戦略とは切り離して推進することはできない状況であり,更に,公共性を担保しつつも知財の価値を高める国際標準化の推進が不可欠になっている.

 本稿では,最近の高周波コネクタの国際標準化の動向を解説するとともに,知財戦略との一体的な推進について解説する.


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