教育優秀賞贈呈

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Vol.100 No.7 (2017/7) 目次へ

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 本会選奨規程第29条(電子工学及び情報通信並びに関連分野における教育実践(学会,教育機関,企業等での教育の実践)において顕著な成果を挙げ,当該分野の教育の発展に寄与した個人)に基づき,下記の3名を選び贈呈した.

情報数理分野及び技術英語の優れた教科書の執筆及び講演活動

金谷健一

 金谷健一君は,2013年に岡山大学を定年退職され,現在は同大学名誉教授である.同君は,岡山大学及び前任地の群馬大学在職中から今日に至るまでコンピュータビジョンの研究に関して多くの独創的な論文を発表され,世界的に高い評価を得ており,IEEE,IAPR及び本会のフェローを授与されている.またこれまでに和書10冊,訳書2冊,洋書6冊の教科書を出版されている.

 同君の教科書は,学生の立場から見た疑問点を懇切丁寧に取り上げていることに定評があり,教員のみならず学生からも評判が良い.例えば,以前に出版され現在でも広く教科書として使われている応用数学の教科書に対して,2012年に日本工学教育協会著作賞が授与されている.最近は,数値解析,技術英語,幾何学・代数,コンピュータビジョンに関する教科書を和書と洋書合わせて7冊出版され,これらの多くが全国の大学で教科書として採用されている.とりわけ,技術英語については市販書のほとんどが医学,生物,物理,化学,機械,電気関係の内容であるのに対して,同君が執筆した本は情報系に特化している稀有な教科書であり,情報系の学生の指導に最適との評判である.更に同君は,以前から本会に様々な解説記事を書かれており,それらの記事を御記憶の諸氏も多いと思われる.

 また同君は,本会を含む多くの学協会において,研究の進め方や技術英語に関する講演やチュートリアル等を以前から精力的に実施され,定年退職後も精力的に続けられている.更に一般社団法人学術英語学会顧問も務められている.注目すべきは,同君は現在でも国内,国外の学会で自身の研究成果の発表や招待講演を続けられていることであり,第一線の研究者自身が行う講演ということで大いに関心を集めている.

 以上のように,同君は情報数理分野や技術英語に関する優れた教科書の執筆と講演活動によって学生や研究者の能力向上に寄与し続けており,その貢献は極めて顕著である.そのため本賞を贈呈するにふさわしくここに推薦する.

区切

信号処理分野の国際的人材育成への貢献

西原明

 西原明法君は,1973年東京工業大学工学部を卒業,1978年同大学院博士課程(電子工学専攻)を修了され,同年工学部助手に任用されました.その後,助教授,教授を経て,2016年4月から同大学特任教授に就任し,現在に至っておられます.この間,2003年に本会フェロー並びにIEEE Fellow,2007~2008年度に本会企画理事,2011~2012年度本会総務理事,2017年からIEEE Region 10 Director-Electとして学会活動にも尽力されています.

 この間,同君は信号処理分野を中心に大学,産学連携,国際間において,効果的な教育のために,対面,遠隔,オンライン環境による教育方法を導入し,それらの効果測定に基づいた,教育方法の組合せやその最適化を検討されました.近年,大学で求められる反転学習などの方法を,信号処理教育として導入,実践指導してこられました.現在も,東京工業大学工系人材養成機構において,大学コンソーシアムでの教育研究活動の促進に貢献されています.これまでの活動は下記のようにまとめられます.

 (1) 産学連携組織による教育活動での貢献:ディジタル信号処理及び組込み処理教育の産学連携組織であるDSPS教育者会議を1999年に代表として創設し,2013年の第15回まで継続的に開催に貢献してこられました.

 (2) 国際間での遠隔教育の発展に関する貢献:大学で国際大学院担当として,信号処理の英語講義を担当し,2003年からはタイ,フィリピンでも開講されました.この講義は,衛星通信,インターネットによる教育システムの機能を駆使され,情報通信技術の遠隔教育の可能性を実証されました.

 (3) 国際交流への支援の貢献:東京工業大学をはじめ,学生主体の国際交流学生会などの活動を継続的に支援してこられました.また,認証評価活動を本会やアジア地域で尽力され,国際交流の促進に貢献されました.

 以上のように同君が,本会並びに国内外で多様な教育活動を展開されてきた功績は極めて顕著であり,本会の教育優秀賞を贈呈するに誠にふさわしい方であると確信致します.

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段階別コンピテンシーによる教育の実践・評価

牧野光則

 「段階別コンピテンシー」は,2008年に中央大学理工学部情報工学科が始めた教育活動である.育成する人材像に基づいて詳細かつ段階的に定義したコンピテンシー(行動特性)を,学生の行動指針として提示し,かつ,教育のアウトカム指標として利用する.情報工学科では,専門科目に対して期待されるコンピテンシーの設定,評価基準への適用,評価方法の開発・実践を進めている.

 本取組みの代表的存在は,2009年から実施している課題解決型科目「画像・映像コンテンツ演習」である.当該科目に課せられているコンピテンシーを半年間のプロジェクトによって獲得させ,2年間4科目の連続履修で学生自身のPDCAを促す.このために,各回の授業計画に基づいて発現を期待する典型的行動を抽出し,コンピテンシーとの関連付けなどを行い,各回の授業での教員またはTAによる学生の指導・促しを行っている.

 成果デモとポスターによる発表会では,卒業生も含む審査員による第三者評価で,コンピテンシーの水準を点検している.加えて,自己点検との比較や,年次進行に伴うコンピテンシーの変化など,データを集積し,次年度以降に活用している.得られた結果から,科目履修生は未履修生より自己点検結果が高く,年次進行に伴い審査員が判定する水準も向上する傾向が見られる.また,審査員の評価精度も徐々に向上するなど,学生の行動から教育の質を点検・評価するための知見を蓄積している.

 牧野光則君はこの活動に当初からリーダーとして取り組み,この活動の学部・大学全体への展開にも積極的に参画している.取組み内容や成果を意欲的に学内外に発信しており,日本工学教育協会,経済産業省からそれぞれ授賞,選定されている.また,独立行政法人情報処理推進機構がコンピテンシー評価基準策定に本取組みを参考にしている.このほか,国内外大学のFD講演会等での講演や視察・見学への対応など,精力的に活躍し続けている.

 このように先駆的かつ幅広い波及効果をもたらす取組みを,会員である同君が中心となり推進していることは,本会にとって名誉であると確信し,ここに推薦する.

区切


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