特集 3-4 5Gを実現するミリ波CMOS回路技術

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Vol.101 No.11 (2018/11) 目次へ

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3. 5G を支えるテクノロジー

特集3-4

5Gを実現するミリ波CMOS回路技術

Millimeter-wave CMOS Circuit Technology for 5G

國弘和明 岡田健一

國弘和明 正員:シニア会員 日本電気株式会社ワイヤレスネットワーク開発本部

岡田健一 正員:シニア会員 東京工業大学工学院電気電子系

Kazuaki KUNIHIRO, Senior Member (Wireless Network Development Division, NEC Corporation, Kawasaki-shi, 211-8666 Japan) and Kenichi OKADA, Senior Member (School of Engineering, Tokyo Institute of Technology, Tokyo, 152-8552 Japan).

電子情報通信学会誌 Vol.101 No.11 pp.1123-1129 2018年11月

©電子情報通信学会2018

abstract

 第5世代移動通信システム(5G)では,広い信号帯域幅を確保できるミリ波帯を活用して,現行4Gに比べ10倍以上の10Gbit/sを超える高速通信の実現を目指している.ミリ波の欠点である電波の減衰や直進性を補って,安定した通信を実現するには,数百のアンテナ素子で構成されるフェーズドアレーアンテナを用いた高精度なビームフォーミングが有効である.5Gを広く社会に普及させるためには,これを小形・省電力・低コストに装置に実装する必要があり,集積回路技術が極めて重要になる.本稿では,5G向けミリ波ビームフォーミング集積回路技術の現状と今後の展望について述べる.

キーワード:ミリ波,ビームフォーミング,フェーズドアレーアンテナ,移相器,CMOS

1.は じ め に

 第5世代移動通信システム(以下,5G)では,4K・8K高精細動画像伝送の普及や,仮想現実(VR: Virtual Reality)/拡張現実(AR: Augmented Reality)などの新しいサービスに対応するために,現行のLTE-Advancedに比べて10倍以上の,10Gbit/sを超える高速通信が求められる.これを実現するために,5Gでは,広い信号帯域幅を確保できるミリ波(用語)帯を活用して,高速通信を行うことを目指している.しかしながら,ミリ波は,距離減衰が大きいことに加え,直進性が強く,建物などの陰への回り込みが小さいなど,移動通信には適用しにくい特性を有している.これを補うために重要となる技術が,ビームフォーミング(BF: Beamforming)である.ビームフォーミングは,空間的に放射される電波を特定の方向に集中的に放射する技術である.通信したい端末の方向に電力を集中することで,通信距離を伸ばすことができる.また,電波を空間的に多重化することで,周波数利用効率を向上し,通信容量を増やすことも可能である.

 ビームフォーミングは,複数のアンテナから放射される電波の位相を調整することによって実現される.そのため,従来の無線装置に比べて,多数の送受信回路が必要になり,消費電力や装置サイズが大きくなる傾向がある.5Gが,広く社会に普及するためには,省電力で小形のミリ波ビームフォーミング装置の実現が必須である.そのためには,高精度に位相や振幅を調整する機能を搭載したミリ波回路とその集積技術が重要になり,現在,開発が活発化している(1)(5)

 本稿では,まず,5Gにおけるミリ波のユースケースを述べる.続いて,ミリ波ビームフォーミングを集積するための要素技術として,ビームフォーミング方式の比較,フェーズドアレーアンテナの実装,半導体デバイスの選択について述べる.その後,5Gでの早期実用が有望視されている28GHz帯を用いたビームフォーミング回路の実例を紹介する.


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