解説 全二重無線通信の実用化に向けた課題と可能性

電子情報通信学会 - IEICE会誌 試し読みサイト
Vol.101 No.4 (2018/4) 目次へ

前の記事へ次の記事へ


解説

全二重無線通信の実用化に向けた課題と可能性

Issues and the Possibility of Full-duplex Wireless Communications

猿渡俊介 渡辺 尚

猿渡俊介 正員 大阪大学大学院情報科学研究科情報ネットワーク学専攻

渡辺 尚 正員 大阪大学大学院情報科学研究科情報ネットワーク学専攻

Shunsuke SARUWATARI and Takashi WATANABE, Members (Graduate School of Information Science and Technology, Osaka University, Suita-shi, 565-0871 Japan).

電子情報通信学会誌 Vol.101 No.4 pp.387-393 2018年4月

©電子情報通信学会2018

abstract

 当初は不可能であると考えられていた全二重無線通信は,2010年にスタンフォード大学から発表された概念実証論文をスタート地点として無線通信分野のみならず半導体分野でも活発に研究がなされ始めている.全二重無線通信とは,一つの周波数帯で基地局と端末が同時かつ双方向に通信を行うことができる技術であり,既存の半二重通信と比べて周波数利用効率が2倍となる.本稿では,全二重無線通信が現状でどのような仕組みで実現されているのか,現状ではどのような課題があるのか,周波数利用効率の向上以外にどのような可能性があるのかを紹介する.

キーワード:全二重無線通信,自己干渉除去,信号処理,通信プロトコル,無線通信回路

1.は じ め に

 全二通無線通信は面白い.だが課題が多すぎて実用的ではない.このように考えていた時期が筆者らにもあった.ところが,研究を進める中で,徐々に全二重無線通信がデータ通信容量を2倍にできる以上の可能性があることが分かってきた.

2.全二重無線通信の仕組み

 まずは全二重無線通信の歴史を簡単に振り返る.以降では無線LANを想定して議論することに注意されたい.無線通信の分野では,一般的に,同じ周波数帯で同時に送受信することは不可能であると考えられていた.例として図1にIEEE 802.11n(用語)において6Mbit/sで通信する場合を示す.IEEE 802.11nにおいて6Mbit/sの通信レートで通信する際の最小受信感度は約-82dBmである.自端末の送信電力が20dBm,相手端末からの信号が-82dBmで届くとすると,受信する信号の電力の約160億倍の信号を自端末から送信することになる.本稿では,自端末の送信アンテナから送信した電波が自端末の受信アンテナで受信することによって相手端末からの信号を受信できなくなる干渉を自己干渉(用語)と呼ぶ.雑音フロアを-90dBmとすると送信電力20dBmの場合では110dBもの自己干渉除去を行わなければならず,全二重無線通信は実質不可能であると考えられていた.

fig_1.png

 このような事実を受け,無線通信の著名な教科書である文献(1)には,

It is generally not possible for radios to receive and transmit on the same frequency band because of the interference that results.


続きを読みたい方は、以下のリンクより電子情報通信学会の学会誌の購読もしくは学会に入会登録することで読めるようになります。 また、会員になると豊富な豪華特典が付いてきます。


続きを読む(PDF)   バックナンバーを購入する    入会登録


  

電信情報通信学会 - IEICE会誌はモバイルでお読みいただけます。

電子情報通信学会誌 会誌アプリのお知らせ

電信情報通信学会 - IEICE会誌アプリをダウンロード

  Google Play で手に入れよう

本サイトでは会誌記事の一部を試し読み用として提供しています。