解説 EOポリマーを用いた光変調デバイス

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Vol.101 No.8 (2018/8) 目次へ

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解説

EOポリマーを用いた光変調デバイス

EO Polymer Modulators

横山士吉

横山士吉 九州大学先導物質化学研究所先端素子材料部門

Shiyoshi YOKOYAMA, Nonmember (Institute for Materials Chemistry and Engineering, Kyushu University, Kasuga-shi, 816-8580 Japan).

電子情報通信学会誌 Vol.101 No.8 pp.845-849 2018年8月

©電子情報通信学会2018

abstract

 近年,オンチップ光集積デバイスの研究分野で電気光学(EO)ポリマーを使った高速・低消費電力の光変調デバイスの研究が注目を集めている.特にSi導波路とEOポリマーを組み合わせた変調器はチップの小形化だけでなく,変調の高性能化にもつながることが示されている.EOポリマーの材料開発面では,長期間の熱安定性や高温動作など,これまでポリマーの応用で懸念されていた課題解決も進んでいる.本稿では,EOポリマーを応用した最新の高速変調器技術の研究/開発状況について,デバイス特性と材料特性の両側面から概説する.

キーワード:電気光学,ポリマー,シリコン(Si),導波路,光変調器,ハイブリッド

1.は じ め に

 イーサネット光伝送規格の総伝送速度は年々増加の傾向にあり,その増加率は400倍/20年である.これを支える光変調のチャネル速度は2010年までに10Gbit/sから25Gbit/sまで高速化が進み,100ギガイーサ(100GbE)では4~16チャネルの並列伝送によって伝送容量の増大に寄与している.更に次の標準化では400GbEの準備も進められ,データセンター用などデータトラヒックの急増に対応する短距離伝送方式とそれを支えるデバイス開発が急務となっている.このような先端的な光通信用デバイスの研究開発状況の中で,近年,EOポリマー変調器への期待が国際的に高まっている.既に実績の高い無機や半導体光デバイスに対して,実用に向けた課題は多いが,高速性の潜在性は非常に高く,低消費電力の観点からも多様な通信デバイス応用の候補として注目され始めている.

 現在,高度なフォトニックネットワークに向けて,光通信用デバイスの研究開発は必然的に活発化し,特にデータセンター用デバイスなどは光インタコネクト関連の市場拡大の中でも注目度が高い.このデバイス研究・開発分野の中心にあるのがSiフォトニクスである.キャリヤプラズマ分散を利用した変調器も実現し,光伝送の大容量・省電力に向けた多くの研究報告が進んでいる.一方,Si変調器は原理的な動作帯域の限界があり,また変調効率,動作電圧,高速性,サイズなどの間にトレードオフもあるなど全ての特性を兼ね備えた低消費電力デバイスの開発は難しいとの指摘もある.これを打開するため化合物半導体とのハイブリッド変調器の研究も進んでいる.EOポリマーはスピンオンにより容易にSi導波路上に成膜でき,光・電気機能の両方でハイブリッド化した高性能EO特性と超高速変調の応用が実現している.


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