小特集 音声言語理解のこれまでとこれから 編集にあたって

電子情報通信学会 - IEICE会誌 試し読みサイト
Vol.101 No.9 (2018/9) 目次へ

前の記事へ次の記事へ


小特集

音声言語理解のこれまでとこれから

小特集編集にあたって

編集チームリーダー 中野幹生

 近年のハードウェア技術と情報技術の発展により,スマートフォンなどの小形の機器が非常に高性能になり,様々なタスクをこなせるようになってきた.そのような機器への入力手段として音声言語が期待されてきたが,音声言語理解の精度が不十分であったため,なかなか使ってもらえないという問題があった.

 しかし,2010年代になってから,音声言語理解技術の研究開発に巨額の投資が行われるようになり,比較的単純な文をクリアに発声すれば,ほぼ理解できるまでに精度が向上した.これには,深層学習の発展も大いに寄与している.そして,スマートフォン上のアシスタントやAIスピーカなどのサービスや製品が実用に供され,多くの方に使われるようになった.今後の人工知能の発展に伴い,人工知能と人間のインタフェースの要素技術として音声言語理解はますます重要になっていくだろう.

 今まで目標としていたことができるようになったことで,音声言語理解の研究開発は次のステージに移行した.現状の技術ではまだ扱えていない新たな課題に取り組んでいく必要がある.そのような課題の解決法は今までの技術の発展の延長線上にあるかもしれないし,全く別のアプローチが必要かもしれない.

 このような認識に基づき,本小特集は,音声言語理解技術のこれまでの発展と今後の技術課題を共有し,更なる発展に寄与することを目的として企画した.第1章で音声言語理解技術の現在までの発展と今後の展望を概観した後,第2章で大庭隆伸氏に音声言語理解技術を用いた製品やサービスについて解説して頂いた.第3章と第4章は音声言語理解の両輪とも言うべき音声認識と言語理解の最新技術について,それぞれ渡部晋治氏・堀貴明氏及び颯々野学氏に解説して頂いた.第5章以降では今後の発展が期待される技術分野を扱った.第5章では,一問一答では終わらないやりとりを行うシステム,すなわち,音声対話システムにおける複数の音声発話系列からのユーザ意図理解について吉野幸一郎氏に解説して頂いた.第6章では,森大毅氏に,より自然なインタラクションを行うシステムで有用な,音声からの感情・態度の推定について解説して頂いた.第7章では,駒谷和範氏に,音声対話システムが円滑に対話を進めるために必要な情報を音声発話から抽出する技術に関して解説して頂いた.各執筆者の方々には,現在の技術だけではなく,今後の展望も述べて頂いた.

 結果として,様々な技術要素から成る音声言語理解の現状と課題の全体像を提示することができたのではないかと考える.編集チームリーダーとして,本小特集が音声言語理解技術の発展に資することを願っている.

 最後に,本小特集の趣旨を御理解頂き,お忙しい中御執筆頂いた執筆者の皆様,本小特集の実現に御尽力頂いた中嶋秀治氏をはじめとする編集チームのメンバーの皆様,及び,学会事務局の皆様に深くお礼を申し上げる.

小特集編集チーム

 中野 幹生  小野 智弘  大矢 哲也  戸田 真人  中里 純二  中嶋 秀治  藤田 悠哉 


オープンアクセス以外の記事を読みたい方は、以下のリンクより電子情報通信学会の学会誌の購読もしくは学会に入会登録することで読めるようになります。 また、会員になると豊富な豪華特典が付いてきます。


続きを読む(PDF)   バックナンバーを購入する    入会登録


  

電子情報通信学会 - IEICE会誌はモバイルでお読みいただけます。

電子情報通信学会誌 会誌アプリのお知らせ

電子情報通信学会 - IEICE会誌アプリをダウンロード

  Google Play で手に入れよう

本サイトでは会誌記事の一部を試し読み用として提供しています。