小特集 3. 柔らかいマテリアルの変形を用いた情報処理

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リザバーコンピューティング

小特集 3.

柔らかいマテリアルの変形を用いた情報処理

Exploiting the Deformation Dynamics of Soft Materials as an Information Processing Device

中嶋浩平 井上克馬 國吉康夫 Sophon SOMLOR Tito Pradhono TOMO Alexander SCHMITZ

中嶋浩平 東京大学大学院情報理工学系研究科先端人工知能学教育寄附講座

井上克馬 東京大学大学院情報理工学系研究科知能機械情報学専攻

國吉康夫 東京大学次世代知能科学研究センター

Sophon SOMLOR 早稲田大学理工学術院総合研究所

Tito Pradhono TOMO 早稲田大学創造理工学研究科総合機械工学専攻

Alexander SCHMITZ 早稲田大学理工学術院創造理工学研究科

Kohei NAKAJIMA, Katsuma INOUE, Nonmembers (Graduate School of Information Science and Technology, The University of Tokyo, Tokyo, 113-8656 Japan), Yasuo KUNIYOSHI, Nonmember (Next Generation Artificial Intelligence Research Center, The University of Tokyo, Tokyo, 113-8656 Japan), Sophon SOMLOR, Nonmember (Research Institute for Science and Engineering, Waseda University, Tokyo, 169-0072 Japan), Tito Pradhono TOMO, Nonmember (Graduate School of Creative Science and Engineering, Waseda University, Tokyo, 169-0072 Japan), and Alexander SCHMITZ, Nonmember (Faculty of Science and Engineering, Waseda University, Tokyo, 169-0072 Japan).

電子情報通信学会誌 Vol.102 No.2 pp.121-126 2019年2月

©電子情報通信学会2019

abstract

 柔らかいマテリアルは外的に圧力を受けると極めて多様な形状に変形する.この性質は,対象に押し当てることで適応的に形を変形し対象を包み込んでつかみ取ることが可能となるグリッパの研究にも巧みに応用されている.本稿ではこの柔らかいマテリアルのメカニカルな性質を情報処理の目的に活用することを考える.具体的には,柔らかいマテリアルの変形のダイナミクスを用いて筆記体が書けるという特殊なキーボードが構成できることを示す.本研究は,物理系のダイナミクスをリザバーとして活用する物理リザバー計算の新たなプラットホームの提案を企図するものである.

キーワード:リザバー計算,物理リザバー計算,ソフトロボット,ソフトデバイス

1.リザバー計算と物理リザバー計算

 リザバー計算は,リカレントニューラルネットワークの学習法の一種として導入された(1)(5)にもかかわらず,現在では任意の非線形力学系を計算資源として活用する手法として,当初の枠を越え,発展を遂げている.その威力は,物理実装において特に発揮され,量子多体系(6)(8),スピントロニクス(9),(10),光(11),ナノマテリアル(12),ソフトロボット(13)(21)など,既に応用例が続々と報告されている.物理実装されたリザバー計算は,PC上のソフトウェア内で実装されたものと区別して,特に物理リザバー計算と呼ばれる.

 リカレントニューラルネットワークの学習には一般にバックプロパゲーションスルータイムの手法が使われ,出力層,中間層,入力層の結合は全て学習したい教師信号に基づいて更新される.一方,リザバー計算では,入力層,中間層の結合は不変のまま,リードアウトの結合のみを学習するというスキームを取る.この中間層に結合不変で準備されるリカレントニューラルネットワークはリザバーと呼ばれる.これにより,学習は極めて安定かつ迅速に実装され,数多くの応用が進められている(例えば,文献(22)~(25)).基本的には,通常のリカレントニューラルネットワークがターゲットとするタスクはリザバー計算においても実装の対象となる.例えば,入力に駆動された力学系のエミュレーションのみならず,出力を次の時刻の入力にフィードバックすることで自律力学系を学習することも可能である.情報処理の面では,リザバー部の重みは不変なので,学習させるタスク間の干渉を心配せずに,ある入力に対する複数の関数を同時に学習することが可能となる.これは特にマルチタスキングと呼ばれる(26)

 本稿では,以下,柔らかいデバイスのための最新の応用例を紹介することで,物理リザバー計算の射程を議論する.


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