小特集 折り紙の科学 小特集編集にあたって

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Vol.102 No.4 (2019/4) 目次へ

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小特集

折り紙の科学

小特集編集にあたって

編集チームリーダー 上原隆平

 折り紙と言えば,紙を折るだけの子供の遊びと思う人も,まだまだ多いだろう.折り紙は既にOrigamiのままで英語圏でも通用し,国際的な用語として定着しつつある.日本人なら元々の語義にとらわれてしまうが,海外での「Origami」の受け取られ方は,もっと幅広く,柔軟である.例えばFolding Robotへの応用などは,既に「紙」でもなければ「折って」もいないが,これも広い意味でのOrigamiの典型的な応用研究とみなされている.

 本小特集では,Origami研究の最前線で活躍する研究者に,それぞれの研究について寄稿してもらった.以下,それぞれの記事のテーマを概説しよう.Origami研究の幅の広さと内容の深さを存分に堪能してもらいたい.

 1章「計算折り紙について」(上原隆平)

 理論計算機科学,中でも計算幾何学の一つの分野として,計算折り紙の研究が定着しつつある.本稿では,計算折り紙とは何か,具体例を挙げて解説する.

 2章「ミウラ折りの数理と応用」(三浦公亮)

 折り紙の工学利用の例と言えば,真っ先に挙げられるのが「ミウラ折り」である.ミウラ折りは宇宙空間における巨大建造物である太陽電池パネルの折り畳みの研究の中で考案されたが,様々な面で興味深い性質を数多く持っている.

 3章「折り畳み構造の数理」(奈良知惠)

 与えられた立体を平たんに折り畳むという問題は幅広い応用を持つが,ある種の理想モデルでは,体積が保存されるというフイゴ定理が成立し,原理的に折り畳めない.現実的な折り畳みを実現するためには,数理モデルも含め,未解決な課題が数多く残されている.

 4章「多面体の展開図の数え上げと列挙」(堀山貴史)

 立体と展開図は,小学校で習う概念だが,数多くの未解決問題を持つ.特に実際に立体を展開したときに重ならないかどうかを判定する問題は,高速なコンピュータと効率の良いアルゴリズムの開発なくしては解けない難問である.

 5章「格子パターンと平たん折りの数理」(三谷 純)

 折り紙の自然な問題の一つとして,狙った形やパターンを効率良く折る方法を見つけたいというものがある.そうした問題を扱う場合,一般に格子に沿った折り紙を考えることは,自然でもあるし,コンピュータ向きでもある.こうした探索問題を解くには,効率の良いデータ構造と探索アルゴリズムの開発が必須となる.

 6章「折り紙の産業応用について」(萩原一郎)

 車のエアバッグやハネカムコアなどは,薄いものを折るという観点から見ると,まさに折り紙の工学応用であり,活発に研究されている.しかし実際に開発したものを工業製品として大量生産するためには,解決しなければならない問題が多い.

 7章「RNA折り紙」(関 新之助)

 たん白質の機能は,折り畳まれたときに形成される形状によって決まる部分が大きい.そのため,たん白質の折り問題は,製薬分野などにおける大きな未解決問題である.こうした一次元Origamiのモデルは,ある種の計算モデルとも考えることができる.

 8章「折り紙のバイオ――医療への応用――」

(繁富(栗林)香織)

 近年,著者は「細胞折り紙」というアイデアを提唱・実証している.iPS細胞などを用いた再生医療においては,細胞で狙った立体構造を安価に大量に作る必要がある.その有望な手法の一つとして注目されているのが,この「細胞折り紙」である.

小特集編集チーム

 上原 隆平  武永 康彦  安藤  映  北  直樹  越田 俊介  白木 善史  須賀 祐治  土屋 健伸 


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