小特集 3. 折り畳み構造の数理

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折り紙の科学

小特集 3.

折り畳み構造の数理

Mathematics of Folding Structures

奈良知惠

奈良知惠 明治大学研究・知財戦略機構先端数理科学インスティテュート

Chie NARA, Nonmember (Organization for the Strategic Coordination of Research and Intellectual Properties, Meiji University, Tokyo, 164-8525 Japan).

電子情報通信学会誌 Vol.102 No.4 pp.305-310 2019年4月

©電子情報通信学会2019

abstract

 コンパクトで携帯や収納に便利な折り畳み式製品は多数存在するが,傘の開閉のように簡単な操作による折り畳みの仕組みを有するものについては,形状や素材がかなり限定されてしまう.そこで,本稿では,その壁を破るための一つの方策として多面体の連続的折り畳みの問題を取り上げ,歴史的な経緯を紹介し,既知の三つの方法についてその概要を計算手順とともに示す.特に,ひし形の一般形であるたこ形の翼折りは,多面体の連続的折り畳みの過程を具体的に表現できることを例によって示し,折り畳み式製品にどのように活用できるかを述べる.

キーワード:折り畳み,平たん化,多面体,移動折り目,剛体折り

1.折り畳み式製品の開発

 富士登山にもヘルメットの着用が奨励される今日,携帯や収納に便利な折り畳み式で,身近な備品として常備できる,安価でデザイン性に富んだヘルメットが求められている.また,ヘルメットのほかにもコンパクトにできる折り畳み式品物は多数存在する.そこで,筆者が開発に関与した折り畳み式のヘルメットや厚板ボックスについて,1.ではまず,その構造を紹介し,その後,数理的背景について述べる.

1.1 折り畳み式ヘルメット

 図1の写真は市販化されている折り畳み式の防災用帽子(ヘルメット)の例である.これは2016年3月に放映されたNHK総合テレビ番組「超絶!凄ワザ“最強の帽子”対決」(1)への出演がきっかけとなって,(有)秦永ダンボールと共同で開発したものである.主な構造は外側を包むカバーと,衝撃エネルギーを吸収する内側に設置されたハネカムである.

図1 折り畳み式ヘルメット

1.1.1 カバーの構造

 1枚のA3の厚紙を12等分して,山折りと谷折りを交互に繰り返して平たんに折ると,蛇腹折りの細長い形になる(図2(a)).このままでは,開閉しても立体形状ではなくジグザグの山ができるにすぎない.そこで,長方形をほぼ3分の1ずつの三つのパーツに分割して,各蛇腹折りの山折りをつまむように,端の方を斜めにとじる(図2(b)).この処理によって,開いたときに両端が円錐形の一部を近似する形状となり,立体化できる(図2(c)).実は,素材に用いた厚紙は柔軟性があるために折り畳み構造が機能している(3.2).そこで,市販の製品ではある程度の柔軟性を有する段ボールを使用している.


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