解説 光アイソレータ――光集積回路への展開――

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解説

光アイソレータ

――光集積回路への展開――

Optical Isolator: Evolution to Photonic Integrated Circuits

水本哲弥

水本哲弥 正員:フェロー 東京工業大学

Tetsuya MIZUMOTO, Fellow(Tokyo Institute of Technology, Tokyo, 152-8550 Japan).

電子情報通信学会誌 Vol.102 No.6 pp.577-582 2019年6月

©電子情報通信学会2019

abstract

 光アイソレータは,ある特定の伝搬方向には光を伝達し,逆方向への光の伝搬を阻止する機能を持つ素子である.この機能は,高性能な光通信システムや高感度な光センシングを行う際の光源の安定化や光増幅器の発振防止のために必要不可欠である.一方,様々な光機能素子を一体化した光集積回路の開発が進んでおり,光アイソレータの光集積回路への導入が望まれている.光アイソレータを光集積回路上に実現するためには,構造と材料の両面で解決すべき課題があり,いまだ実現に至っていない.本稿では,光アイソレータを他の光回路素子と一体集積するために行われてきたこれまでの研究成果と今後解決すべき課題について概説する.

キーワード:光アイソレータ,光集積回路,直接接合,非相反効果,磁気光学ガーネット

1.光アイソレータとは

 高速光通信システムでは,高いビットレートで高密度に配置された波長多重伝送がなされており,発振波長幅が狭く,波長とともに出力強度が安定した光源を用いる必要がある.半導体レーザに光が入射すると,この特性が劣化することが知られており,これを防止する必要がある.また,光増幅器の発振防止のために,意図しない方向に光が伝搬することを阻止する機能が必要である.この機能を実現する素子が光アイソレータである.

 本稿では,他の光素子との一体集積を目指した光アイソレータの研究動向と今後の展開について概説する.

2.バルク形光アイソレータ

 集積形の光アイソレータについて述べる前に,偏光子などの光学要素で構成される光アイソレータの動作原理とその特性を制限する要因について述べる.光学要素の断面は光波の波長に比べて十分に大きく,光波は自由空間を伝搬する場合と同様に振る舞う.このような光アイソレータを,バルク形光アイソレータと呼ぶ.

 光アイソレータ機能を実現するためには,伝搬方向によって光波に対して異なる振舞いを与える効果が必要になる.このような効果としてよく知られているのは,ファラデー効果である.この効果は,マイクロ波帯などの電磁波でも,伝搬方向に沿って磁化された磁性体中を伝搬する際に,伝搬する直線偏波の偏波面が回転する現象としても知られており,マイクロ波などの周波数帯でアイソレータを実現するために古くから用いられてきた.


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