講演 会長就任あいさつ 会長就任にあたって――未来に輝く電子情報通信学会に向けて――

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Vol.102 No.7 (2019/7) 目次へ

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講演 会長就任あいさつ 会長就任にあたって――未来に輝く電子情報通信学会に向けて―― 中沢正隆

中沢正隆 名誉員:フェロー 東北大学電気通信研究機構

Masataka NAKAZAWA, Fellow, Honorary Member (Research Organization of Electrical Communication, Tohoku University, Sendai-shi, 980-8577 Japan).

電子情報通信学会誌 Vol.102 No.7 pp.639-648 2019年7月

©電子情報通信学会2019

1.は じ め に

 電子情報通信学会は一昨年2017年に創立100周年を迎え,新たな100年に向けて第一歩を踏み出した.また今年元号も令和となり,大正・昭和・平成・令和と四つの元号にわたって活発に活動してきていることとなる.クラリベイト・アナリティクス(Clarivate Analytics)社は世界の革新的な企業100社(Top 100 Global Innovator)を毎年選出しているが,その中で,今年も日本が世界トップの39社,続いて米国33社,フランス7社,…と続く(1).この日本の39社のうち,本会に個人会員として登録されている会社は36社に及ぶ.また,本会の創立100周年記念の折に,優れた業績として選出された242件のマイルストーン(2),並びにIEEEのマイルストーン(3)における日本人の活躍(193件中34件)を見るにつけ,今までに電子情報通信学会が世界に果たしてきた貢献は極めて大きい.

 しかしその一方で,本会では企業会員を中心に年約700人の割合で会員が減少している.このままだと20年後には1.4万人減り,現在約26,000人の会員は40年後にはいなくなってしまうことになる.将来本会がなくなっても,例えばIEEEさえあれば,世の中の電子情報通信に関する学術や産業の発展には特段困らないという考え方もあるかと思う.しかし,日本から世界に向けての情報発信をこの上ない喜びとし,長く電子情報通信の研究に携わってきた本会会員の一人として,電子情報通信学会の発展を願わずにはいられない.

 今日のICTの発展とともに,電子情報通信技術は空気のような意識しない存在となり,そのすばらしさが見えにくくなってきているのも事実である.しかし,これは全ての技術が一度は経験することであり,最先端の技術もやがて共通化した普通の技術になっていくということである.それを避けては通れないし,嘆いていても仕方がない.その中でいかに非コモディティな新技術を創っていくのか,そこにこそ産業界とアカデミアを結ぶ学会の存在意義がある.

 ここでは本会が抱える問題点の根底にあるものを浮かび上がらせたい.そして会員一人一人が学会発表・運営に積極的に関わり,強い意思をもって諸課題を解決して,新たな電子情報通信学会の礎を共に創っていきたいと思う.

中沢正隆

2.時代とともに変化する学会

 今日の日本では図1に示すようなSociety 5.0の実現を目指して(4),自動運転,ロボティクス,更には○○×ICTのように農業,漁業,林業,運輸などの様々な分野を革新するICT技術が注目されている.これらの技術革新により図2に示すような持続可能な社会を実現することが期待されている.そして,ICT技術を生み出した本会は正にその中心にいる.にもかかわらず会員数が減少しており,何となく閉塞感が漂うのが現状である.なぜだろうか.本会に所属する研究者はいろいろな知恵を絞って先ほどのマイルストーンにあるように,今日のグローバルなICT社会を作り上げてきた.そして今では,インターネットにより大概の情報を取ることができる時代になった.昔なら学会に所属しないと取れなかった情報が,会員でなくても瞬時に手に入る時代である.

図1 Society 5.0

図2 Society 5.0で実現する社会

 また,自らの構築したICTにより産業発展のスピードが早くなり企業研究者も余裕がなくなる一方で,比較的ゆっくりと発展するアカデミアと急速に多様化する産業界との連携もすれ違いが生じてしまう.極論すると大学人にとっては学会がなければ情報交換あるいは議論・発表をする場がなくなって研究に窮するが,企業人にとっては学会がなくても開発・実用化を進めることができる.昔は企業研究者とアカデミアの人の時間の進み方が比較的近い関係にあったが,今は企業関係者がアカデミアには構っておられず,かなり意識が違う関係になっている.また,大学人も最近では評価に追われ,実質的な研究活動に費やす時間が減って,大学としての本来の研究が十分にできているのかも問題である.最先端研究とは名ばかりで忙しいだけの大学であってはならない.

 ではもう学会はいらないのか? 産業が右肩上がりで会員数が伸びているときには考えなくてよかった(考えておくべきだった)が,今は学会の在り方にはパラダイムシフトが起こっていて,それにどう対応していくかが問われている時代である.今一度学会とは何か,その魅力とは何か? 今こそ情報化社会にフィットした新たな電子情報通信学会が求められているのだと思う.そして立ちはだかる課題を克服していくことが我々の使命であろう.

 学会は時とともに,その姿を変え,発展していくことが宿命であると思う.松尾芭蕉は「不易流行」が俳句の基本であると説いている.すなわち絶対に変わらないものと(不易),時代とともに変わりその最先端を追うもの(流行)とから成るということであるが,これは学会活動にも通ずるものがあると思う.軸足をきちんとしながら最先端の技術を新たに作り上げることの重要性を説いており,そうすれば普遍的な存在になれると.我々は革新のない伝統などはあり得ないことを肝に銘ずるべきである.

 学会において最も重要なことは,それぞれが目指す基礎研究・実用化研究・開発を行う中で,その芽や成果を皆で議論し,もって学術の発展,産業の発展に貢献し,社会を豊かにしていくことであろう.大学生は研究によって鍛えられ,やがて日本の将来を背負っていく.一方企業の技術者はアカデミアと連携して技術を発展させ,自らの経験を学会へフィードバックすることにより学会を率先してけん引して頂きたい.また,新たなものを生み出すには,その原動力となる情熱,好奇心,信念のようなものをお互いに学び取る必要がある.しかしネットではこれらは学べない.学術大会あるいは国際会議での生きた議論の中にこそ新たな価値を見いだしていけるのであって,ネットではその場の議論で生まれる新たな「知」に出会うことはない.そういう意味で学会の価値とは,その場にいなければ技術開発に遅れるような危機感を覚えさせることができるかどうかであると言ってもよい.

中沢正隆

3.IEEE,OSAに学ぶ

 ここで我々にとって身近な海外の学会としてIEEE(5)やOSA(Optical Society of America)(6)を例にとり本会との相違点や学ぶべき点を考えてみたい.御存じのように,IEEEは会員数42万人,正味財産(Net Asset)が342億円の大きな学会であるが,単なる学会というよりも標準化や保険など様々な事業を通じて発展しているグローバル企業である.OSAは光学系の学会であり本会同様最近創立100周年を迎えている.この学会の会員数は21,000人,その正味資産は107億円である.米国の学会とはいえ100か国以上の会員がおり,光学系のノーベル賞受賞者はほぼ全員OSAの会員である.この両学会は学会の黒字運営を最も優先してきている組織である.一方,本会は会員26,000人,正味財産は19億円である.私は今までにIEEEのPhotonics SocietyのBoard of Governor並びにOSAのDirector at Largeという役職を経験してきたが,そのとき感じた本会との体質の差を図3にまとめている.ただし,具体的な数値は入っておらず学会の運営方針の違いを示している.

図3 IEEE,OSAに学ぶIEICEの将来

 この図を見て頂いて分かることは,IEEEとOSAは会費の収入で運営するというよりも,いかに学会のジャーナルや国際会議を発展させ,それとともに投稿数・発行部数や国際会議数を増やすかに重きを置いている.以前私はそれらの理事会で,会費の収入がどうなっているのか心配であると質問したところ,返ってきた返事は,会費よりもジャーナルの発行部数や投稿件数,国際会議の収益の方がもっと重要であるとのことであった.極論すると,会員数はゼロでも投稿してくれる人がいる限り,あるいは国際会議に大勢集まってくれれば収支が成り立つような口ぶりであった.この話は満更大げさではない.IEEEやOSAの会費も一番安いランクは1万円台であり,本会の1.3万円と大差はない.しかし,IEEEやOSAの論文1編発行するために著者が支払う費用は,10万円以上である.また,国際会議のregistration feeも5~8万円である.有名なジャーナルや国際会議であるために各国から多くの投稿があり,その査読が世界中を飛び回る.IEEEやOSAにはレベルの高い論文が載るということを世界中が知っており,そこに名前が載ることは大変名誉なことである.また,各ジャーナルの編集長(Editor)は著名な中堅研究者がやっており,皆が興味を持つ新たなTopical Meetingの提案など目の付け所も良い.ジャーナルの名前も臨機応変に変えて魅力的なものにしている.このように本来学会に求められる学術性の高さがあり,かつ国際会議を通じて産業界との連携を持っているのが米国の学会である.また,国際会議では若手研究者の活動や再就職を援助するブースもあり,大学と企業の研究者交流としても有効に働いている.更には,欧米ではジャーナルのオープンアクセスも進んでおり,本会もこの動きに乗り遅れないようにしたい.

 一方本会はその収益の多くを会費と研究専門委員会の技術研究報告から得ている.しかし,研専数は1990年の46から2018年の85に増えているものの,技報の発行部数は年々減っており収益を維持するのが大変である.研究会の存在は大変重要で本会の特徴であるが,ガラパゴス的で海外の人は発表に来ない.最近の研究会が収益につながらないのは,すぐにネットでそれに似た情報が取れるからであろうか? 現在,研究会の資料は電子化への移行段階であるが,参加費を徴収するなど収益の減少を食い止める必要がある.また,会費収入も年々減少している.このような学会運営のビジネスモデルは破綻しているのではないかと思う.今後,本会が一般社団法人として成長していくためには,レベルの高い論文発行や国際会議の積極的な開催に取り組むなど企業的な努力をして,会員により良いサービスを提供することが極めて重要である.

 更に,本会には一つ大きな問題がある.それは他の日本の学会にも言えることであるが,日本の研究者は企業の研究開発者を含めて,本会よりも例えばIEEEやOSAに投稿していることである.国際会議もしかりである.私も500件近い自分のジャーナル論文の2/3は欧米の論文である.いい成果が出るとどうしても日本より海外に投稿し,世界中からいい評価を得たいというのは研究者の心情であろう.また我々の諸先輩もそうであった.日本の研究者間のコンセンサスとしてまず日本の雑誌に投稿する,というような話があればともかく,研究者の意思を規制すべくもない.しかし,例えば海外に発表した優れた論文を本会の招待論文として積極的に発行することは可能である.そしてそれら最先端の研究を日本に広め,その内容を総合大会やソサイエティ大会で大いに議論することが重要であろう.世界のトップを走る技術の議論ができたり,聞けたりするのであれば人は集まる.日本にも優れた中堅の研究者はたくさんいるので,そういう方々に本会の編集や国際連携に加わって頂ければ,本会が主催する国際会議も米国のようにできるはずである.

 また,組織運営の違いとして,IEEEもOSAもPresidentの横にはCEOあるいはExecutive Directorがいて財政面と組織の発展に責任を持って管理運営している.本会にもこのような方式の導入を考えてはどうだろうか.図4に本会の組織の概略を示す.本会の運営はボランティアで運営されているため,おのずと限界が見えている.図4に示すように財政及び運営全般を学会専従のCEOや,各ソサイエティのまとめ役として目利きのできる技術営業的な専従職員(ソサイエティCEO)が必要であり,彼らが会員と事務局と理事会とを結び付けて本会を発展させてくれるのではないかと思う.このような新たな施策により本会の大きな発展が期待されるのであるが,それら専従社員の雇用費用を獲得する必要がある.各ソサイエティは独自の努力で黒字化を達成しそれにより自らのソサイエティを発展させてほしい,と私が言っているのはここに基本がある.金もうけをするのではなく黒字化により会員に多くの学術的恩恵をもたらし,ひいては健全な学会運営を行うことができる.図3に示したように,今後,本会も論文誌や国際会議でどのように収益を上げていくか一層真剣に考える必要があろう.

図4 一般社団法人電子情報通信学会の将来の組織図

 論文や国際会議の運営ばかりでなくほかにも気になることがある.例えばIEEEではWIE(Women in Engineering)と言って女性研究者が積極的に学会に参画していくような活動やLMAG(Life Member Affinity Group)という高齢者の会員による学会活動,若手のサポートをする組織もある.今後,人口減少していく中で学会もその影響を大きく受けることになるわけで,高齢の方でも学会活動に参加する意思のある方は積極的に活動して頂きたいと思う.

4.学会を繁栄させるために

 世界で注目される学会になるために重要なことは,何よりも我々自身で新たな技術開発の芽を創り出すことであろう.私の経験を基に少しお話したい.私は光通信分野を長年研究してきているが,最近“光通信にもまだやることがあるのですね”と言われたことがある.30年前と違って光通信技術は格段に進歩してもうやることがないように思われたのかもしれない.しかし光ファイバ通信にはファイバヒューズという入力光パワーの限界があって,WDM(Wavelength Division Multiplexing:波長分割多重)と呼ばれる通信方式の波長数をむやみに増やすことはできない.光ファイバが光パワーで溶けてしまうのである.しかしその一方で情報通信量は年率40%以上の割合で増加しており,20年後には約1,000倍の通信容量を維持する通信システムの構築が急務であった.そこで本会に所属する我々は,小柴正則元会長をはじめ日本の産学官の研究者が集まって,今後どのようにして光通信容量を増やして行くか議論をした.2008年のことである.そのとき我々が目指す将来像を描いた図面を図5に示す.その中で生まれてきたのが多値変調(Multi-level modulation),マルチコアファイバ(Multi-core fiber),多モードの制御(Multi-mode control),すなわち三つのMulti技術でそれぞれ10倍,全体として1,000倍の情報量増加に対応しようするものである.我々はそれを3M技術と名付けて世の中に提案した(7).その3M技術(多値伝送,マルチコアファイバ,多モード制御)の内容を図6に示す.この3M技術は欧米で急速に広まり,我々のお株を奪ったかのように研究が展開され,今日の欧米の国際会議の目玉はこの3M技術になっている.IEEEもOSAも日本生まれの3M技術,いわば本会発の技術によって学術の発展や収益面で多大な恩恵を受けている.

図5 光ファイバ通信の技術発展の概略図

図6 三つのマルチ技術(3M技術)の内容

 我々はこの3M技術の重要性に鑑み,本会に第二種研究会としてEXAT(Extremely Advanced Transmission)研究会を立ち上げ,今は5期10年目に入っている(8).そして,2年に一度国内で国際会議を開催して世界的なステータスを確立しつつある.更に特許庁もこの技術に注目してその産業動向調査を行い,我々に3M分野の世界的な動向をフィードバックしてくれるまでになっている(9).このような新技術の提案は他の分野でもできるのであって,本会の各ソサイエティの中で将来何が重要な技術かを仲間を作って議論し,積極的に情報発信をして頂きたい.例えば「次世代ICTやポストICTは何でしょうか」とか「生命科学,脳科学,あるいは社会科学とICT」のようなことを考えていくことが期待されているのではないだろうか.

 一度新たなことを始めると更なる発展が起こるものである.我々は3Mの中のMulti-level modulation技術を5G並びにBeyond 5G展開し,無線と光をシームレスにつなぐ研究開発を進めている(10).その様子を図7に示す.今までは無線と光は別物として研究開発されてきたが,ディジタルコヒーレント伝送により光の通信レベルが無線と同一レベルになり,シームレスにつなぐアクセス系の可能性が見えてきている.これにより高速大容量,低遅延,低価格なmobile fronthaulなどへの貢献が期待されている.

図7 光と無線をコヒーレント技術で統合した新たなアクセス系ネットワークの一例

 日本企業がイノベータとして世界のトップを走り,その中でも電気情報系が頑張っていることを最初に述べた.しかしこのことを多くの人は知らない.今こそ学会から社会へ向けて情報発信することの重要性が増してきている.そのためには,会誌を分かりやすく,省庁連携ページ,学会連携ページの設置なども重要であろう.また,本会がグローバルな学会である以上,海外会員にとってのメリットをどのように打ち出していくのか喫緊の課題でもある.

5.電気・情報関連学会の強い連携

 電気・情報関連学会には五つの学会(電子情報通信学会,電気学会,情報処理学会,映像情報メディア学会,照明学会)があり,15年ほど前に電気・情報関連学会連絡協議会が発足している(11).この趣旨はワンアンブレラ型機構の下,

政府提言,国際的な情報発信など学会が協調すべき案件

各学会が実施している講習会,セミナ,大会などの相互協力,補完

事務局を含む学会運営に当たっての効率化

今後の学会協力の進め方

 等に加えて,各学会がその時点で直面している共通課題への対応策の紹介,社会的な外部要因変化に対する学会の在り方,などについて率直な意見交換を行うことであった.15年たった今,情報共有や一部連携のみならず,①~④の主体的な連携を更に強く進めるべきと考えている.

 世の中は多くの異分野技術が融合して新たな産業が起こっている.我々にとって融合領域である○○×ICTは産業発展の絶好のチャンスである.チャンスを生かすには融合によって価値を生み出す多くの技術を持つ必要があるが,現実には,企業会員を中心とする会員数の減少は電気・情報関連学会に共通する課題である.今回の私の提案は,お互いの学会の状況を把握し合い,社会にインパクトを与える新たな活動に向けて強い具体的な連携を図ることにある.例えば,電力エネルギー×ICT,パワーエレクトロニクス×ICT,センサ×ICTなど横断的な幅広いテーマ,学際領域への挑戦は大変魅力的であり,電気自動車やロボット技術への応用など伸び代が大きいものと思う.このような連携は産業界にとっても好ましいものであり,学術的にも新たな研究をいち早く進められるものである.

 実は学会間の連携強化は2001年,今から18年にも前に電気学会と電子情報通信学会との間で議論(電気学会誌,vol.121, no.7「学会だより」(2001))されている.そのときの図面を図8に示す.当時と比べると世の中がかなり変わってきており,今後新たな連携を進める中で,現状に即した改訂版のシナリオ策定を通して,日本の電気・情報関連学会のグローバルなプレゼンスを高めたいものである.企業の経営にはホールディングカンパニーという言葉をよく聞くが,今こそ電気・情報関連学会を束ねるホールディングソサイエティのような機構が重要なのだと思う.

図8 電子情報通信学会との協力推進方策案の比較評価(出典:電気学会誌,vol.121, no.7「学会だより」(2001)掲載)

 まず最初のステップとして,本会と電気学会(12)とのより強い連携が両者の強みを発揮させ,新たな産業発展・学会発展につながっていくのではないかと考えている.今こそ両学会の連携を基軸に新たな学会運営を模索していくことが重要と考え,本会の企画戦略室と電気学会の総務企画担当役員との間で昨年秋から議論を進めてきており,今後更に検討を促進してもらおうと思っている.

中沢正隆

6.ま  と  め

 センサネットワークを通じて‘もの’と‘もの’がつながるSociety 5.0のようなICT社会では技術開発のスピードが昔の倍以上で変化している.学会もその時代に合わせて変化していかねばならないところに,今日の学会運営の難しさがある.電子情報通信学会には100年にわたる輝かしい歴史と伝統があるが,伝統とは進化を続けて発展していくことであり,単なる継承ではない.不易流行ではないが,変化するもののみが生き残り,新たな技術開発はその変化の中から生まれてくる.

 米国のGAFAは新しいITサービス企業群であり,ICTのれい明を機敏に捉えて生まれたものである.残念ながら日本はそのような新たなビジネスチャンスを生かし切れておらず,学会は社会的価値の創造に一層貢献することが求められているのだと思う.技術の黒船はいつの時代も形を変えて日本に来ているのであって,学会こそそれに立ち向かって新たな価値を見いだしていく有効な組織であろう.

 私が感ずるハードウェアとソフトウェアの発展の様子を図9に,また課題解決型研究開発と分野別基礎・基盤研究開発の関係を図10に示す.最近はソフトウェア的色彩の強い企業が発展している中で,殊更ICTを使うことが強調されている.しかしその一方で,どのようにICT技術そのものを高度化していくかも大変重要であろう.すなわちBy ICTとOf ICTの両方のバランスが取れるように技術開発を進めていくことが大事であり,科学技術立国日本の本質であろうと思う.また,課題解決型研究が主になり過ぎると基礎基盤の研究開発とのバランスが損なわれることも懸念される.

図9 ハードウェアとソフトウェアの年代に見る発展の様子

図10 課題解決型研究開発と分野別基礎・基盤研究開発の関係

 本会が置かれている状況として,財務体質の改善,広報の充実,会員や論文発行部数の減少など,右肩下がりの話が多いが,会員の皆様には是非第一人称で学会に参加して頂きたいと思う.ケネディ大統領が“And so, my fellow Americans: ask not what your country can do for you-ask what you can do for your country.”と言っているように,学会に何をしてくれるかを期待するのではなく,自分が本会のために何ができるかを一人一人が会長になったつもりで考えて頂くことをお願いしたい.学会活動はボランティアだからというのではなく,産業界,アカデミアが本当に真剣になって第一人称で「共創」すれば本会の未来は明るいものになっていくのだと思う.会員一丸となって,未来に輝く電子情報通信学会を創っていこうではありませんか.

 皆様の一層の御支援をお願い致します.

文     献

(1) http://discover.clarivate.com/2018-Top100-en

(2) https://www.ieice.org/jpn/100th/milestone.html

(3) https://ethw.org/Milestones:List_of_Milestones, https://ieee-jp.org/activity/jchc/milestone_jusho.html

(4) https://www8.cao.go.jp/cstp/society5_0/society5_0.pdf#search=%27Society+5.0%27

(5) https://www.ieee.org/

(6) https://www.osa.org/

(7) M. Nakazawa, “Giant leaps in optical communication technologies towards 2030 and beyond,” European Conference on Optical Communication (ECOC 2010), Plenary Talk, Sept. 2010.

(8) http://www.ieice.org/~exat/

(9) 特許庁,平成29年度 特許出願技術動向調査報告書「次世代光ファイバ技術」,平成30年.

(10) “安全・安心で効率的な社会基盤と知的ネットワークの実現を目指す光・無線融合型自律分散協調情報通信ネットワークの構築,”マスタープラン2017学術大型研究計画 計画番号122,
http://www.scj.go.jp/ja/info/kohyo/kohyo-23-t241-1.html

(11) http://www.lcieice.org/index.html

(12) http://www.iee.jp/wp-content/uploads/honbu/31-doc-honb/katsudo007.pdf


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