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この原稿が会誌に掲載される頃には,新型コロナウイルス感染症の分類が5類感染症へ変更されていることかと思います.2019年末突然現れてから3年半,まだまだ病気そのものがなくなったわけではなく多くの方がいまだ御苦難に遭われていらっしゃるかと思いますが,一つの区切りを迎えたことになります.
この期間,情報通信技術によって多くの社会活動がオンラインで行われてきました.遠隔講義やWebinarが開催され,以前より気軽に学びの機会を得られるようになり,場合によっては国を超えて最新の情報を得られるようになりました.また様々な会議もオンラインで行われるようになりました.電子情報通信学会においても,研究会や大会がオンラインで開催され,一時的に発表件数は減少しましたが,その利便性からかえって参加者は増加するという現象が見られました.しかしながら研究発表における議論がそれによって盛んに行われるようになったかというと,多くの方が指摘されているように質疑そのものは低調になったようです.その後この状況を改善すべく対面とオンラインのハイブリッド開催となったことは御存じのとおりです.議論を通じて新しい知見を得るには,オンライン会議は向いていないようです.
イギリスの小説家ホレス・ウォルポールの造語に“Serendipity”があります.この言葉は彼が子供の頃に読んだ,3人の王子たちが旅をする童話にちなんだものです.この童話の中で王子たちは,歩いてきた道の片側の草だけが食べられており,また食べられている草の一部が食べ残されているのを見て,旅の途中で出会ったラクダの片目が不自由で,また歯が1本欠けていることを言い当てています.Serendipityはこの童話を訳された竹内慶夫氏の解説によると,(1)偶然と(2)才気によって(3)探していないものを発見することと定義されています.自然科学や最近ではビジネスの世界でも,この言葉が使われるようになっています.例えば電子レンジなどはこのSerendipityによって作り出されたと言われています.また海外のテック企業の中にはこのSerendipityを生み出すべく,在宅勤務を制限したり廃止したりするところも出てきています.
ハイブリッド開催となった今年3月の総合大会で,5ソサイエティで合同開催したWelcome Partyに出席しました.小中学生を含めたジュニア会員が参加し,非常に多くの方が訪れて活気を取り戻していました.多くの学生さんや若い技術者・研究者の方々が好奇心を持って説明を聞く姿は,未知なる領域に冒険をしている探検家のように私には見えました.多くの方にSerendipityが訪れることを願っています.
ポストコロナの時代,ハイブリッド開催に慣れたとはいえ,研究会や大会の現場ではオンライン配信のためのセッティングがかなりの負担になるのは事実です.今後の研究会や大会は,この負担をサポートしつつ気軽に参加できるというその利便性を享受し,同時に現地参加を促してSerendipityが生まれるような形式を模索していく必要があります.
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