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これまでCNR研専は,物理的な身体性を持つビジブル形に限らずCGエージェントのようなバーチャル形ロボットがネットワーク連携することで,人々の生活を豊かにするためのサービス等を実現することを目的に活動を行ってきた.具体的には,センサを含むロボット・ロボット間連携技術,ロボットと人とのインタラクション技術などの基礎技術から,センサやインタラクション等を通して収集されたデータのロボットサービス活用・実証実験などの応用までが対象となる.
上記の基礎・応用を含めた技術的課題に加え,今後取り組むべき課題の一つとして,ELSE(Ethical, Legal, Social, and Economic)問題が挙げられる.文字どおり,倫理的・法的・社会的・経済的課題を意味し,開発した基礎技術や応用サービスを社会展開した際に生じ得る問題を指す.一般的な研究の多くは,限られた場所・時間において実験を実施するが,CNR研専の目指す日常生活で活用されるロボットサービスを想定した場合,限定的な環境における実験では問題にならなかったことが,提案サービスの有用性を覆す大きな問題となり得ることがある.CNR研専の目的の性質上,情報処理関連の多くの基礎的技術の活用が必須であるため,例年,他の研究会と共催を実施している.2017年2月にはPRMU研専との共催研究会において,「ELSE Challenge」と題し,基礎技術が社会展開されるときのELSE問題に関して,“研究者はどこまでELSE問題を考える必要があるのか?”というテーマでパネルディスカッションを実施した.これまで研究者はELSE問題を考慮して技術開発を実施することは少なかったが,特に企業の方々から,近年,技術開発者にELSE問題を配慮する取組みが求められてきているという意見があり,当該分野の重要な課題の一つとなることが予見された.
本章では,CNR研専における技術的な抱負と,運営上の抱負に関して述べる.
技術的な抱負としては,前述のとおりELSE問題に関する取組みを積極的に受け入れる体制を整えることが挙げられる.ELSE問題の解決アプローチは技術的改善のみに限らず,社会的な取組み等のアプローチが考えられるが,そのような取組みは現在CNR研専では受け入れる体制が万全ではない.CNR研専では,システムやサービスの技術的な向上に着眼した研究のみならず,それらが社会展開する際に貢献するELSE問題に対する取組みも議論できる場としていきたい.
運営上の抱負に関しては,昨今の業績に対する評価尺度を鑑みると,研究会の立場は業績を積む場というよりは,国際論文・会議に通用する研究・研究者を育てる場であると考えられる.そのためには,研究発表時に内容改善に向けた議論が重要となるため,議論を活発化する取組みにも尽力していきたい.もう一点は,研究発表の速報性を重視し,原稿の発行タイミングに依存せず,申込みから一週間程度で発表可能な速報発表の導入を検討する予定である.このように,様々な取組みが実施可能な研究会の利点を生かし,当該分野の重要性の周知を進めるとともに活性化を目指したい.
(平成29年5月29日受付 平成29年6月29日最終受付)
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