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IE研専は昭和47年に設立されて以来,45周年を迎える.図1に研専設立時の趣意書のエッセンスを筆者なりにまとめた.変換・伝送・記録・処理・表示といった従来の研究分野を,「画像」という横の軸から見た総合技術である.本質的には視覚機能の拡大に伴う種々の研究課題,すなわち,視覚機能の空間的拡大→画像通信/符号化,視覚機能の時間的拡大→画像記録/検索,視覚機能の識別能力拡大→画像処理/認識,の三つの観点に基づいて「画像工学」の研究が萌芽した.
設立以来,画像符号化,画質評価,画像入出力装置,撮像装置,画像通信システム,画像認識・解析,特徴抽出,画像検索,画像復元,色彩信号処理,コンピュータグラフィックス,三次元画像処理といった非常に幅広い分野において「実用」という観点を鑑みながら研究を積み上げてきた.時空間の広がりを持つ画像データの情報量はばく大であり,当初は放送,映画,写真,テレビ会議,ファクシミリといった業務システム応用が主であったものが,1990年代以降の,コンピュータ・半導体性能の飛躍と高速ディジタルネットワークの普及が強く後押しし,一気に画像のコンシューマ応用へとかじを切ることで大きく花開くこととなる.
画像工学の産業貢献は計り知れないが,一つだけに絞るとすれば画像圧縮符号化技術となろう.研究会で技術研さんを積み上げてきた圧縮技術は,国際標準化の流れともうまく協調しJPEG,MPEGに代表されるように,現代産業に広く浸透している.ディジタル放送,ディジタルカメラ等の映像機器,インターネット映像通信など,あらゆる画像デバイスやサービスに適用され,画像圧縮技術なくしては現代のディジタル画像文化の発展はなかったと言ってよい.2010年以降飛躍的に発展した各種SNSにも,もはやそこに存在することすら忘れるように圧縮技術が使われ,すっかり私たちの生活の中に溶け込んでいる.文献(1)~(4)に記されているように,45年にわたり粛々と積み上げられてきた画像工学研究の賜物にほかならない.
(1) 相澤清晴,“画像工学のこれまでとこれから,”2013信学総大,no.DP-1-1, p.SS-1, March 2013.
(2) 八島由幸,“画像符号化研究の歩む道,”2013信学総大,no.DP-1-2, pp.SS-2-SS-3, March 2013.
(3) 甲藤二郎,“今後の画像工学に期待すること,”2013信学総大,no.DP-1-3, pp.SS-4-SS-5, March 2013.
(4) 如澤裕尚,“画像符号化の産業への貢献と今後の課題,”2013信学総大,no.DP-1-4, p.SS-6, March 2013.
(平成29年4月27日受付)
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