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Webサービス技術の普及とともに,サービスを単位としてインターネット上にソフトウェアを構築し利用するサービスコンピューティングが2000年代前半から産業界を中心に注目を集めた.学術分野でも,国際会議として米国中心のSCC(International Conference on Services Computing),欧州中心のICSOC(International Conference on Service Oriented Computing)が2003年頃から立ち上がり,2008年にIEEEがTransactions on Services Computingを発刊した.
一方,国内では,クラウドコンピューティングなどの営利企業によるサービスの集積が話題となったため,ビジネス寄りの活動との誤解があり,この分野の研究者が極端に少ない状況であった.また,その少数のサービスコンピューティングの研究も,要素技術の応用として取り組まれており,エージェント,ソフトウェア工学,Web技術など既存の分野に分散していたため,米国,中国に比べると世界にインパクトを与えられずにいた.そこで,国内のサービスコンピューティング研究のコミュニティを形成しプレゼンスを高めるために,2009年4月にサービスコンピューティング時限研専を設立し,Webサービスを対象とする異分野融合の研専が誕生した.
当初,サービスコンピューティングは,その設計思想を実現するための基盤研究とサービス合成の研究が中心であった.2000年のSOAP,2001年のWSDLのW3C勧告をはじめ,2000年代中頃はサービスの記述や発見,相互運用性を実現するための各種標準仕様が提案され,それらをどのように活用し,補完するのかという研究が多く見られた.一方,サービス合成の研究はQoS(Quality of Service)などの非機能要件に基づいてサービスを自動合成する研究が多く見られた(1).
現在はサービスコンピューティングの環境が整ったことで基盤研究は落ち着き,サービスシステムの設計に研究課題が移っている.またサービス合成は引き続きサービスコンピューティングの中心的研究課題であるが,WSDLを利用しないRESTベースのWebサービスの増加や,ソーシャルコンピューティング,モバイルコンピューティング,クラウドコンピューティングの普及,Big Dataを背景に,サービス合成のスケーラビリティやオンラインサービス合成,ソーシャルネットワーク上の情報を活用したサービス推薦など新しいトピックが生まれている.更に,クラウドソーシングやInternet of Thingsの普及により,人とサービスの連携,‘もの’とサービスの連携などあらゆるものをサービスという抽象化により連携する試みが活発である(2).
(1) M.P. Papazoglou, P. Traverso, S. Dustdar, and F. Leymann, “Service-oriented computing: state of the art and research challenges,” Computer, vol.40, no.11, pp.38-45, Nov. 2007.
(2) A. Bouguettaya, M. Shing, M. Huhns, Q.Z. Sheng, H. Dong, Q. Yu, A.G. Neiat, S. Mistry, B. Benatallah, B. Medjahed, M. Ouzzani, F. Casati, X. Liu, H. Wang, D. Georgakopoulos, L. Chen, S. Nepal, Z. Malik, A. Erradi, Y. Wang, B. Blake, S. Dustdar, F. Leymann, and M. Papazoglou, “A service computing manifesto: The next 10 years,” Commun. ACM, vol.60, no.4, pp.64-72, April 2017.
(平成29年5月2日受付)
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