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ネットワークセキュリティの最新動向
4.ネットワークセキュリティをめぐる法律や制度
小特集 4-2
国際社会におけるネットワークセキュリティ政策の動向
Network Security Policy Trends in the International Community
abstract
経済がグローバル化した今日,ネットワークセキュリティは国家の成長,安全保障に不可欠の要素であり,各国はサイバーセキュリティやデータ保護に関する政策実施・法制化を推進している.セキュリティ政策は一国に閉じるものではなく,国際的な協調が必須である.本稿では,ネットワーク管理の基本となるサイバー空間の統治と,ネットワークセキュリティに関連する各国の政策について,最新の動向を解説する.
キーワード:ネットワーク統治,ネットワーク監視,セキュリティ情報共有,データ保護
ネットワークが経済や社会の基盤インフラとなった現在,サイバー攻撃は社会に対する大きな脅威となりつつある.現在,IoTのような新しい技術が社会基盤となる時期を迎え,ネットワークセキュリティの重要性が今までにも増して増大している.近年のサイバー攻撃は高度化,グローバル化し,特定の企業や個人単独のセキュリティ対策では対処できず,政府のセキュリティ政策推進,国家間あるいは,第三者機関による国際連携が必須である.
本稿では,ネットワークセキュリティに関する政策や国際連携に対する各国政府・国際機関の最新動向について解説する.2.では,ネットワーク管理の基本となる,サイバー空間の統治に関する国際的な動向を俯瞰する.3.では,ネットワークセキュリティ政策の国際連携で鍵となる欧米のサイバーセキュリティ政策・データ保護政策,あるいはセキュリティ情報共有と貿易管理施策の状況について述べる.4.ではこれらを踏まえ,ネットワークセキュリティ政策の今後の動向について検討する.
インターネットに代表されるグローバルなネットワークは,特定の組織が占有し,利用方法を規定するものではなく,国家を含む組織がネットワーク資源の配分や利用について民主的に協議する自律分散・協調的な統治の仕組みが必要となる.これまで,この議論の中心となってきたのはICANN(The Internet Corporation for Assigned Names and Numbers)である.ICANNは1998年設立の非営利組織で,インターネットのアドレス空間の調整管理を通じ,セキュアで安定したインターネット運用を実現している.ICANNはインターネット利用組織に対して,ドメイン名をはじめとする識別子を割り当てるほか,ドメイン名システム(DNS)のルートサーバ運用や,それらに関するポリシー策定の調整を行っている(1).
ICANNはカリフォルニア州法に基づく非営利民間法人として設立され,意思決定はマルチステークホルダーアプローチと呼ばれる公開合議制をとる.ステークホルダーとなるのは政府,インターネット利用企業・サービスプロバイダ・NPO等の非営利団体・知財関係機関・大学等の研究機関,など多彩であり,ボトムアップに意思決定がなされる.このため,ある国の政府が自国のIT政策をICANNのポリシーに反映させることは容易でない.
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