巻頭言 “100年”を考える――次の100年に向けた学会のデザイン――

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Vol.100 No.4 (2017/4) 目次へ

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 今年は本会の創立100周年に当たり,大きな節目の年となります.次の100年に向け,更に大きく飛躍することを目指した100周年宣言も出されました.正に本会の今後の在り方を検討すべきタイミングです.平成28年度から,本会の企画室は企画戦略室に衣替えし,その主ミッションを本会の中長期戦略についての検討と再定義して活動を始めました.私はそのタイミングで企画戦略室長を拝命することになりました.時代の流れが速くなっている中で先を見通したデザインをすることの難しさを感じながら議論を進めています.

 100年の原点は大正6年5月創立の「電信電話学会」にあり,その目的とするところは“電信電話の学術技芸の研究,知識の交換および事業の振興を図ること”でした.電子技術の急速な発展と社会の情報化の進展に伴い,昭和62年1月には“電子工学および情報通信”を対象分野とし「電子情報通信学会」と改称しました.ムーアの法則による電子技術の指数関数的な進展は,リニアな感覚を持つ私たちの想像をはるかに上回るスピードです.私が初めて海外出張した30数年前には,余程のことがない限り会社に国際電話を掛けることは怖くてできませんでした.少し長めに話すとホテル代を上回る電話代が請求されたからです.つながること自体に大きな価値があったと言えます.今は通信のコストは限りなくゼロに近付いています.つながることは当たり前になりました.私たちは本会設立当初のターゲットであった“電信電話”の高度化を超えて新たな価値創造にチャレンジしていくことが必要になっています.

 AI/IoTの進展が,大きな変化をもたらし始めています.世の中のあらゆる領域でディジタライゼーションが進んでいます.実世界をサイバーの世界に射影してシミュレートすることで,社会デザインをはるかに効率的に行うことができるようになりました.○○×インフォマティクスという技術領域も新たに形成されるようになっています.“電子情報通信”が新しい社会創造に貢献する可能性が無限に広がってきていると言えます.

 私は本会のような組織にも,チャールズ・ダーウィンが言った“最も強い者が生き残るのではなく,最も賢い者が生き延びるのでもない.唯一生き残ることができるのは,変化できる者である.”との格言が当てはまると思っています.電子情報通信技術そのものの進化を目指してきたこれまでの体制,会員構成から,新たなメンバーを迎え入れながら貢献領域を拡大していく体制,運営にいかに変わっていくかが,これからの電子情報通信学会がチャレンジすべきところなのだと思います.グローバルに目を向ければ,IEEEはそういった変化を既に始めています.日本,更にはアジアを代表する学会として遅れをとるわけにはいきません.

 本会が創立される少し前の1901年に報知新聞が「二十世紀の豫言」と題する未来予測記事を掲載しました.当時の感覚では人々の想像をはるかに超えたであろう23の予言が記載されています.写真電話(テレビ電話)や買物便法(インターネットショッピング)のように,電子情報通信に関連する内容は100年でほぼ実現されています.自然や生物に関連するものがほとんど実現されていないのと対照的です.今,AI,ロボティクスの進展に伴い,100歳寿命社会の到来,ライフスタイル・働き方の変革,新たな価値の創出等が議論されています.私たちの取り組む領域は,変化のスピードは速いですが,予測可能性は高いと言えます.「二十世紀の豫言」に見られるよう,余り近視眼的になることなく長期的な視点で将来を考えることも重要です.本会も,現状の課題を見極めるとともに,将来視点からあるべき姿を考えながら,変革に取り組むことが,次の100年も持続可能な学会として第一歩になると確信しています.


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