小特集 可視光通信の最新動向 編集にあたって

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Vol.101 No.1 (2018/1) 目次へ

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小特集

可視光通信の最新動向

小特集編集にあたって

編集チームリーダー 山里敬也 岡田 啓

 LED照明・ディスプレイの普及加速と光空間伝送技術の進化に伴い,可視光を用いて情報の無線伝送を行う可視光通信が再び大きな注目を集めている.可視光通信では照明やディスプレイといった既に使われている光源に情報を載せることができたり,可視光波が届く範囲を目で確認できること,更には電波が届きにくい水中でも利用できるといった特徴がある.本小特集では,可視光通信の標準化動向から,最新可視光通信技術,更には可視光通信の特長を生かした,水中可視光通信などの様々な応用技術,実用技術について紹介し,今後の可視光通信の展望を解説する.

 第1章では可視光及び光無線通信の歴史,原理,特徴,応用例について解説するとともに,技術面及び適用領域面から今後の可能性や課題についても紹介する.

 第2章では可視光通信の標準化動向について解説する.可視光通信についての標準化は,国際電気標準会議(IEC),一般社団法人電子情報技術産業協会(JEITA),IEEE,国際電気標準会議(ITU)で活動が行われている.例えば,JEITAでは可視光通信標準方式CP-1221(可視光通信システム),CP-1222(可視光IDシステム),CP-1223(可視光ビーコンシステム)が制定されており,CP-1223をベースに,IECではIEC 62943として可視光ビーコンシステムの標準化活動がスタートしている.これら可視光通信の標準化動向について紹介する.

 第3章では可視光通信のための新しい伝送技術について解説する.スマートフォンなどの汎用ビデオカメラを受信機とした場合,可視光通信の伝送速度はカメラのフレームレート(速いものでも60フレーム/秒)で制限される.このため,伝送速度は低速となる.これを解決する伝送技術として,仮想正弦波を用いた変復調方式が提案されている.この仮想正弦波の原理とその応用について紹介する.

 第4章では可視光通信の応用例として水中可視光通信を紹介する.従来,水中では音波を使った通信が一般的で,位置測位や状態監視に広く用いられているが,通信速度が10kbit/s程度しかなく,高速化が課題であった.とりわけ,近年,水中での観測においても,画像データの伝送が可能な高速無線通信の確立が望まれている.以上の背景の中,小形かつ強力な青や緑の光を放射する高性能なLEDやレーザダイオードの普及に伴い,水中での可視光通信が注目を浴びている.水中では,可視光波の減衰率が最も小さいことが知られており,水中可視光通信により高速大容量伝送が期待できる.本章では,この水中可視光通信について紹介する.

 第5章では可視光通信の実用化技術とそれを活用した製品について紹介する.可視光通信を活用した製品には,それぞれ製品独自の特徴的な技術がある.特にこれら製品の背景にあるコア技術にフォーカスを当てて解説する.

 本小特集の記事を通じ,読者の皆様が可視光通信技術の最新動向の理解を深めるとともに,今後の研究・開発の御参考にして頂ければ幸いである.

 最後に,御多忙の中快くお引き受け頂いた執筆者の皆様,企画・編集について御協力頂いた一般社団法人可視光通信協会の皆様,編集チームの皆様,学会事務局の皆様に深く御礼申し上げる.

小特集編集チーム

 山里 敬也  岡田  啓  菊間 一宏  川喜田佑介  川西  直  菅原 真司  増野  淳 


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