小特集 2. 可視光通信の標準化

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可視光通信の最新動向

小特集 2.

可視光通信の標準化

Standardization of Visible Light Communications

春山真一郎

春山真一郎 正員:フェロー 慶應義塾大学大学院システムデザイン・マネジメント研究科

Shinichiro HARUYAMA, Fellow (Graduate School of System Design and Management, Keio University, Yokohama-shi, 223-8526 Japan).

電子情報通信学会誌 Vol.101 No.1 pp.38-43 2018年1月

©電子情報通信学会2018

abstract

 1990年代に白色LEDが発明されて以降,それを通信のために利用する可視光通信の研究が活発に行われている.可視光通信の製品やサービスが世の中に普及したときに互換性などの問題が起こることが予想されるが,標準化が行われていれば,互換性などの問題で混乱することを回避することができる.現在,可視光通信の標準化は,IEC(国際電気標準会議),日本のJEITA(一般社団法人電子情報技術産業協会),IEEE,ITU(国際電気通信連合)で活動が行われている.本稿では,これらの組織における標準化の動向を紹介する.

キーワード:可視光通信,標準化,IEC,IEEE,ITU,JEITA

1.は じ め に

 標準化とは製品やサービスなどの種類,規格,測定方法などを統一する活動のことである.製品やサービスの規格などの統一化は,その種類や規格の少数化,単純化,秩序化につながり,その結果,ユーザにとっての利便性の向上,生産者にとっての生産の効率化等の効果が得られる.一方,製品やサービスなどの標準化をせずに自由に放置すれば,複雑化,無秩序化する可能性がある.標準化の失敗の代表例として,日本での電気の周波数が,東側が50Hz,西側が60Hzとなっている例がある.2011年の東日本大震災後の計画停電はいまだに記憶に新しいが,これは原子力発電所や火力発電所が発電不能になったということのみが原因ではなく,異なる周波数の地域間で電力の融通をする周波数変換所の変換容量に限度があり十分に融通できなかったということも原因であったと言われている.日本が単一の周波数に統一化していたならば,計画停電は必要でなかったかもしれないと考えると,この一つの事例をとってみても,いかに標準化が大切であるかということが分かる.

2.可視光通信の標準化

 目に見える光を用いて情報を伝達する方法は,昔から行われていた.例えば,古くから,狼煙(のろし)を用いて遠くにいる人間が煙を目で見て認識して何らかの情報を伝送したり,18世紀末から19世紀のフランスで人間が望遠鏡を用いて遠くにある腕木を認識する腕木通信方式が使われたりした.

 情報を受け取る人間がその景色を目で認識して情報を伝達するには,狼煙の場合は煙の色や燃やす順序,腕木通信の場合は腕木の表す文字コードをあらかじめ申し合わせておく必要がある.申合せがないと,受け取る人間は,送る人間が意図する意味を理解することができないからである.この申合せを多くの人たちの間で共有して利用することが標準を決めることの目的である.

 1990年代に白色LED(Light Emitting Diode)が発明されて以降,可視光通信の研究開発が盛んに行われているが,2007年以降,可視光通信の普及を目指して,その標準化の活動が行われている.

 可視光通信の標準化は,電気工学と電子工学の標準化を行うIEC(国際電気標準会議,International Electrotechnical Commission),日本のエレクトロニクス技術や電子機器,情報技術に関する業界団体であるJEITA(一般社団法人電子情報技術産業協会),アメリカの電気工学・電子工学技術の学会であるIEEE(The Institute of Electrical and Electronics Engineers, Inc.),無線通信と電気通信分野の標準化を行うITU(国際電気通信連合)での活動がある.本稿では,IEC,JEITA,IEEE,ITUにおける標準化の動向を紹介する.


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