解説 ワイヤレス電力伝送の技術,制度化,標準化最新動向

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解説

ワイヤレス電力伝送の技術,制度化,標準化最新動向

Latest Trend of Technologies, Rule Making and Standardization Regarding Wireless Power Transmission/Transfer Systems

篠原真毅 庄木裕樹

篠原真毅 正員 京都大学生存圏研究所生存圏電波応用分野

庄木裕樹 正員:フェロー (株)東芝技術・生産統括部

Naoki SHINOHARA, Member (Research Institute for Sustainable Humanosphere, Kyoto University, Uji-shi, 611-0011 Japan) and Hiroki SHOKI, Fellow (Technology & Productivity Planning Division, Toshiba Corporation, Tokyo, 105-8001 Japan).

電子情報通信学会誌 Vol.101 No.1 pp.79-84 2018年1月

©電子情報通信学会2018

abstract

 ワイヤレス電力伝送(WPT)システムを世界中どこでも利用できるようにするためには,電波制度などの国際協調と国際的な製品規格の標準化が必須になる.現在,技術開発,製品開発が盛んに進められている一方で,このような制度や標準化に関わる政策的な活動も活発に進められている.本稿では,ワイヤレス電力伝送技術の最新動向のほか,我が国での制度化の状況,ITU-Rなどにおける利用周波数に関する協調議論の最新の状況,標準化の最新動向などについて紹介する.

キーワード:ワイヤレス電力伝送,制度化,標準化,磁界結合形,マイクロ波送電

1.は じ め に

 ワイヤレス電力伝送(WPT: Wireless Power Transmission/Transfer)システムは,携帯電話や電気自動車等の二次電池を利用したエレクトロモビリティ機器の発展とともに近年注目されるようになってきた.WPTシステムが注目されるようになったきっかけは,米国マサチューセッツ工科大学が2006年に,磁界共振(磁気共鳴とも呼ばれる)電力伝送と呼ばれる磁界結合WPTシステムを発表したことである.磁界共振WPTの発表以前から,コイルに電流を流すことで発生する高周波磁界(kHz帯~MHz帯)を用いた磁界結合WPTシステムは,シェーバーやコードレスフォンの充電台(1980年代から)やICカード(1995年頃から)等に採用され商用化されていた.電気自動車のワイヤレス充電システムは1980年代以降各国で実証研究が行われ,工場内の自動搬送車(AGV: Automated Guided Vehicle)への採用も早くから行われていた.一方,WPTシステムはGHz帯の電磁波を用いても可能であり,920MHz帯や2.45GHz帯を用いたRF-IDもマイクロ波の空間伝送によるWPTシステムが採用されている.

 これまで商用化されたWPTシステムは個別に利用できるシステムであり,例えばコードレスフォンのワイヤレス充電器でシェーバーの充電を行うような汎用性はなかった.しかし,磁界共振WPTシステムの研究開発が進むとともに,標準化により世界中どこでもエレクトロモビリティ機器をワイヤレスで充電できるようにしようとする機運が高まり,現在,各標準化団体で標準規格化の議論が活発に行われている.また,電波法制度上におけるWPTシステムの位置付けが不明確であったことから,国内外における制度化や利用周波数の国際協調に関する議論も活発に行われている.本稿では,WPTシステムの最新技術に触れるとともに,標準化や制度化活動の最新動向についても紹介する.

2.ワイヤレス電力伝送の最新技術動向

 WPTシステムは高周波電磁界若しくは電磁波を介して電気エネルギーを送るシステムである.電磁界も電磁波も,更に光もマクスウェル方程式で記述される同じ現象であるが,周波数が異なることで用いられる近似式が異なるだけあり,高周波電磁界若しくは電磁波を介して電気エネルギーを送るWPTシステムは単なる周波数変換システムであるとも言える.


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