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解説
通信キャリヤにおけるオペレーションアーキテクチャの最新動向
Telecom Operation Architecture for Digital Transformation
abstract
通信サービスのコモディティ化により,通信キャリヤは従来のB2C型ビジネスから,パートナ企業と連携してサービスを提供するB2B2C型へ,ビジネスモデルの変革を求められている.そのようなディジタルトランスフォーメーションを実現するためには,新たなビジネスモデルや顧客からの多様な要求に対する柔軟性や俊敏性に加え,パートナ企業とのシステム間連携を実現するAPIが重要となる.オペレーションのフォーラム標準化団体であるTM Forumでは,それらを支える次世代オペレーションアーキテクチャとしてOpen Digital Architectureを検討している.本稿では,その議論状況及び要素技術を解説する.
キーワード:Open API,マイクロサービス,コンポーネント,Frameworx
光回線や携帯電話回線による電話サービスやインターネット接続サービスをはじめとする通信サービスはコモディティ化が進んでおり,通信キャリヤは従来の一般消費者向けのB2C(Business-to-Consumer)型ビジネスから,パートナ企業と連携してサービスを提供するB2B2C(Business-to-Business-to-Consumer)型へ,ビジネスモデルの変革を進めている.
通信キャリヤでは,各種サービスを提供・運用するために,オペレーション支援システムを構築している.ネットワークやシステムの障害管理や性能管理を担うOSS(Operation Support System;運用支援システム)と顧客管理や課金管理を行うBSS(Business Support System;ビジネス支援システム)をまとめてOSS/BSSとも呼ばれる.
本稿では,通信キャリヤが置かれている状況を踏まえ,オペレーション分野の業界標準を検討しているTM Forum(TMF)におけるOSS/BSSの議論動向として,Open Digital Architecture(ODA)を取り上げ,その要素技術について解説する.
本章では,通信キャリヤが抱える課題を述べ,課題に対して今後取り得る方向性としてディジタルトランスフォーメーションについて触れる.
国内移動体通信キャリヤのARPU(Average Revenue Per User; 1契約当りの月間の電気通信事業収入)は低下傾向が見られる一方,第5世代移動通信システム(5G)にはトラヒック量増加等に対応するため数兆円の投資が必要になると予想されている(1).また,OTT事業者(Over The Top;インターネット回線を通じて,メッセージや音声,動画像コンテンツ等を提供する通信事業者以外の企業)のアプリケーションは,通信キャリヤの収益を50~90%削減しているとの見積もりもある(2).通信キャリヤは,単にデータを流す管を提供するだけの存在,すなわち土管化する恐れがある.
通信キャリヤが収益を向上させる方向性として,ディジタルトランスフォーメーション(DX)がある.これはサービスのディジタル化を進めることで,他社との協業によるエコシステム構築の容易化を狙っている.ディジタル化されたサービスはAPI(Application Programming Interface)を介して他社から利用・制御される.これにより,新たな産業での通信サービスの活用や新たなビジネスモデルの創出が期待され,新たな収益源となり得る(図1(a)).
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