小特集 6. 光技術を利用した電磁界計測

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マイクロ波・ミリ波フォトニクス技術の新展開

小特集 6.

光技術を利用した電磁界計測

Photonics-applied Electromagnetic Measurement

佐々木愛一郎 都甲浩芳

佐々木愛一郎 正員 日本電信電話株式会社NTTデバイスイノベーションセンタ

都甲浩芳 正員:シニア会員 日本電信電話株式会社NTTデバイスイノベーションセンタ

Ai-ichiro SASAKI, Member and Hiroyoshi TOGO, Senior Member (NTT Device Innovation Center, NIPPON TELEGRAPH AND TELEPHONE CORPORATION Atsugi-shi, 243-0198 Japan).

電子情報通信学会誌 Vol.101 No.2 pp.166-173 2018年2月

©電子情報通信学会2018

abstract

 モバイル社会の進展に伴い,通信をはじめとする様々な分野で電磁波が利用されるようになった.このような状況を反映し,電界や磁界の状態を正しく計測する手法が求められている.電磁界計測の手法は様々であるが,光技術を利用した計測法が20世紀後半に提案されて以来,現代においても多彩なアプローチで研究・実用化がなされている.本稿では,光技術を利用した電磁界計測のエッセンスを解説するとともに,我々のグループにおける本計測法の応用例を紹介する.

キーワード:電磁界計測,電気光学結晶,偏光,干渉計,変調,アンテナ

1.光を用いた電磁界計測の歩み

 光を利用した電磁界計測(以降,光電磁界計測と呼ぶ)の歴史は古く,そのアイデアは19世紀にまで遡ると言われている(1).しかしフォトニクスの広帯域性を生かした光電磁界計測ブームの端緒となったのは,今から30年以上前にValdmanisらによって提案された電気光学(EO: Electrooptic)サンプリング(2)であろう.彼らはEO結晶と短パルス光源を利用し,純電気的な計測手段では捉えるのが困難な超高速現象の観測に成功した.

 その後EOサンプリング(EOS)は高速IC内部の波形計測(3)に適用され,1990年代以降になると自由空間を伝搬するTHzパルスの波形計測(4)やイメージング(5)にも利用された.光を利用したTHzパルスのサンプリング計測技術は,現在では遠赤外分光装置として商用化されている(6)

 20世紀後半になると半導体レーザやファイバオプティクスが我々の身近な存在になったため,これらはEOSシステムにも導入され(7),EOSが広まるきっかけとなった.またEOSの知見は,当初の目的だったミリ波やTHz帯などの超高周波計測だけでなく,マイクロ波周波数帯の電磁界を手軽に計測するためのツールとしても生かされた(8)

 このような,EOSを源流とする光計測法の一般的な特徴は,短光パルスを用いていることに加え,主にGaAsやZnTeなどせん亜鉛鉱型の半導体EO結晶が用いられていること,そして光の偏光変調が利用されていることが挙げられる.せん亜鉛鉱型結晶は自然複屈折を持たないため,感度安定度の高い計測システムを構築する上で有利である.またこれら半導体EO結晶は,LiNbO3に代表される絶縁体EO結晶に比べ誘電率が低く,アンテナを使わずに電界を検出することが多い超高周波計測においては特に適している.

 一方で,超高周波計測以外の用途に目を向けると,光電磁界計測の歴史にはEOSとは別の潮流も存在しており,やはり20世紀後半からまとまった報告がなされている(9).こちらの流派の主目的は,アンテナ特性やEMC(用語)試験設備の評価などであり,技術的な特徴としては,(ターゲット周波数が主にマイクロ波帯以下であるため)連続波(CW: Continuous Wave)光源が利用されていること,アンテナと一体化されたLiNbO3(LN)変調素子が主に利用されていることなどが挙げられる.双方の流派の比較を表1に示す.ただしこの比較は一般的な傾向をまとめたものであり,最近では流派間の境界が薄れつつある.


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