巻頭言 創立100周年を顧みて考えたこと

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Vol.101 No.2 (2018/2) 目次へ

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 2017年は,創立100周年を迎えた電子情報通信学会にとってターニングポイントになる年だったと思います.9月15日に開催された記念式典に併せて幾つかの記念事業が催されました.その一つの電子情報通信学会マイルストーン(IEICE Milestone)に調査理事として関わりました.活動中に接した諸先輩方や御協力頂いた多くの方々との交流の中で感じたことや考えたことを記したいと思います.

 本会は100年という歴史の中で,電信電話学会,電気通信学会,電子通信学会,電子情報通信学会と変遷をたどってきました.「通信」という技術を軸に,その周辺にも領域を広げながらその時代時代に必要とされた技術を生み提供してきました.私は通信の普遍性の追求と,世の中に何かを提供したいという思いが,この電子情報通信学会を支え続けているのだと思っています.

 長年にわたり多大な貢献を無償でされてきた諸先輩方の思いから発せられた様々な提言は,マイルストーン冊子第2部特別座談会(パネル討論会)「100年の偉業を振り返り未来に繋ぐ」に記されています(http://www.ieice.org/jpn/100th/ieice_milestone_booklet.pdf).非常に面白く,包摂的な提言が多数寄せられました.是非,一読をお勧めします.

 現在,私は研究者という立場を離れ,ビジネスパーソンとして通信業界の事業に携わっています.この立場からの研究活動への期待は,短期~中長期的な事業化に向けた技術のブレークスルー開発や,グローバルな通信事業者やICTサービスを展開する事業者の目に留まる技術力のプレゼンスにあります.その研究活動を支える論文発表や議論を戦わせる場は,ここ最近大きく様変わりしつつあり,個人会員を主体とする学会から,企業が会員登録する会員企業で構成されるコミュニティ活動の場に移ろいつつあります.そのコミュニティを通して仲間作りや,デジュール標準化やデファクトスタンダード化の流れが加速しているように見えます.このような活動は,目的がフォーカスされ,タイムテーブルも比較的明確であり,事業を生業とする企業活動としては理にかなっています.この流れの中で学会の在り方について,今後も継続議論がなされていくことでしょう.

 個人的な捉え方かもしれませんが,本会には研究に対する姿勢や物事の捉え方を代々次の世代に引き継いできたという長い歴史があります.30年,40年スパンで見ることによって,初めて見えてくるという経験知も持ち合わせています.ビッグデータやAIという新しい技術により,その経験知を不要とする時代が到来するのかは分かりませんが,人から人に受け継がれるというアナログ的な活動は根底に流れ続けていくと信じたいところです.

 ボランティア活動で100年を支えてきた無形の財産を次の世代に引き継ぐために,研究者の立場を離れた今でも学会に携わっているのだと,自問自答しています.


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