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グラフアルゴリズムの最先端
小特集 1.
グラフアルゴリズムの最先端
Frontiers of Graph Algorithms
グラフといっても,折れ線グラフや円グラフではない.点と線の数学である.
グラフは頂点(vertex)の集合と頂点を結ぶ辺(edge)の集合から成る.辺は頂点と頂点が直接つながっていることを表し,すなわち,グラフは関係性を抽象化したものである.例えば,鉄道の路線図,電気回路,通信網,あるいは化学反応系,進化系統樹,感染症の伝搬モデル,地域コミュニティやSNSから国家連携まで様々な社会ネットワーク,企業取引や物流などの経済ネットワーク,因果関係を記述するベイジアンネットワーク,工程表などの依存関係,インターネットやスーパコンピュータなどの計算機ネットワークなど,工学,自然科学,医学,人文科学etc.現実世界の様々な関係性を記述する道具としてグラフは現れる.
昨今の計算機の発達ともあいまって,関係性の情報処理の需要は高まる一方である.その核心技術たるグラフアルゴリズムは,今や学術のみならず現代社会に普遍的に不可欠と言えよう.
19世紀末,集合の自己言及に関するパラドックスなどの奇妙な現象が発見され,19世紀後半から20世紀前半にかけて数学の厳密化が進んだ.ヒルベルトは数学の正当性を証明する一大計画を打ち立て,1900年の国際数学者会議では20世紀の数学が取り組むべき課題(いわゆるヒルベルトの23の問題)の一つとして算術の公理化と無矛盾性の証明を挙げている.ヒルベルト計画への挑戦もあって,数学の公理化は20世紀に成熟を見せる.しかし,ヒルベルトの計画自体は1931年のゲーデルの不完全性定理によって頓挫し,軌道修正を余儀なくされた.
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