小特集 1. 音声言語理解技術の概要と今後の展望

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音声言語理解のこれまでとこれから

小特集 1.

音声言語理解技術の概要と今後の展望

Overview and Outlook of Spoken Language Understanding Technology

中野幹生

中野幹生 正員 (株)ホンダ・リサーチ・インスティチュート・ジャパン

Mikio NAKANO, Member (Honda Research Institute Japan Co., Ltd., Wako-shi, 351-0188 Japan).

電子情報通信学会誌 Vol.101 No.9 pp.875-879 2018年9月

©電子情報通信学会2018

abstract

 本稿では,音声言語理解技術とはどのようなものかと,一般的にどのような要素技術から成っているかを述べるとともに,現在までにどのように発展してきたかについて,概略を述べる.音声言語理解は,音声を単語列に変換する音声認識技術と,単語列をユーザの意図を表す表現に変換する言語理解技術を中心とするが,その他にも様々な技術が統合されている.本稿では更に,現状の音声言語理解技術では解決されていない課題を列挙する.

キーワード:音声言語理解,音声認識,音声対話,音声アシスタント

1.音声言語理解とは

 音声言語理解とは,人が発話した音声を機械が理解できる表現に変換する技術であり,音声を用いた様々なサービスや製品に応用されている.例えば,スマートフォン上の音声アシスタントやいわゆるAIスピーカなどは,音声による命令を聞き取って,音楽を流したり,アラームを設定したり,ニュースを読み上げたりすることができる.また,音声で操作できるカーナビゲーションシステムは,音声で指定された場所や施設を検索して,目的地として設定することができる.

 音声言語理解の結果は,多くの場合フレームと呼ばれるデータ構造を用いて表現される.このフレームから,データベースにアクセスするクエリや機器を操作するコマンドが生成される.例えば,ユーザが「ジャズを聴きたい」と言えば,

[ユーザ意図タイプ=音楽再生,

ジャンル=ジャズ]

のようなフレームが生成され,これからコマンドが作られて実行される.ユーザ意図タイプ以外の情報(例ではジャンル)は属性やスロットと呼ばれる.どのようなユーザ意図タイプを用意するかや,ユーザ意図タイプに応じてどのような属性が必要かは,想定するシステムに応じて決めておく必要がある.

 ユーザが一つ発話を行うたびにコマンドを実行したりデータベースを検索して応答を返したりするような,いわゆる一問一答型のシステムの場合は,一発話の理解結果がそのままデータベース検索式やコマンドを生成するのに用いられる.これに対し,複数のやりとり(ターン)を行う音声対話システムの場合には,やりとりの中で徐々にフレームが作られていき,最終的に得られたフレームの内容が用いられる.例えば,

ユーザ:小田原までの特急券を買いたい

システム:新宿からの御乗車でよいですか?

ユーザ:はい

のようなやりとりから,

[ユーザ意図タイプ=特急券購入,

乗車駅=新宿

降車駅=小田原]

のような理解結果が得られ,これを基にデータベースが検索されて,料金の案内などが行われる.


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