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解説
マルチメディアデータの利活用に関して研究者が持つべき視点とは
――画像の個人情報・プライバシー保護を具体例として――
A Point of View That Researchers Should Have in Utilizing Multimedia Data
abstract
マルチメディアデータを利活用する上で,研究者が配慮すべき個人情報保護の視点とはどのようなものか.これまで行われてきたカメラ画像に関する議論を整理しつつ,昨今進む音声データの利活用にも視野を広げつつ,問題の所在を技術・法制度の両観点から検討する.
キーワード:個人情報保護,プライバシー,パーソナルデータ,カメラ画像,マルチメディアデータ
昨今のIoT機器の普及に伴って,データを取得できるセンサの種類・数量は共に増加傾向にある.研究環境においても,このような多種多様なセンサが用いられ,データが分析され,新たな知見が日々生み出されている.一方で,センサと取得されるデータが多種多様になればなるほど,一般に,個人情報やプライバシー保護の必要性は高まると言える.本稿では,このように多種多様なセンサから取得できるデータを,「マルチメディアデータ」と呼ぶこととし,その上で,マルチメディアデータの利活用における個人情報・プライバシー保護に関して研究者に求められることはどのようなものなのか,特に,技術,制度の両視点から解説を試みる.
主に人間を対象とする多種多様なセンサとそこから取得できるデータの例としては,表1のようなものが挙げられる.
1.1で挙げたようなセンサで取得できるデータの利用例として,具体的には,表2のような例が挙げられる.取得できたデータの組合せ(そのために用いるセンサの組合せ)によって把握できる状態が変化することが分かる.あるいは,個人の識別性という観点で考えると,組み合わされるデータの種類が増える,あるいは,データの履歴が長時間・長期間にわたることによって,識別性が高まるという特徴がある.例えば,短期間の「移動軌跡」ならば単なる属性と整理できるが,長期間の「移動履歴」,特に保存期間を無限と設定するならば個人情報として扱う必要性が高い.表2のように,データの組合せによって様々な状態を把握することができるが,データの「履歴」が個人情報となるかどうかは個別の検討が必要となる.
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