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解説
脳神経計算原理の解明を目指した2光子多細胞イメージングの情報技術展開[Ⅱ・完]
――2光子多細胞カルシウムイメージングデータの情報処理技術――
Technological Development of Two-photon Multicellular Imaging for Understanding Cortical Computation[Ⅱ・Finish]: Information Processing Technology of Multicellular Imaging Data
abstract
第2回となるこの記事では2光子多細胞カルシウムイメージングデータの情報処理的側面に着目して解説する.近年データ量の増大により,神経生理学者の目視によって大量データを隅々まで確認することが不可能になってきている.このため,得られた画像データの処理を自動化する技術が必須になってきており,人工知能関連技術の導入も加速している.画像処理法の発展に伴って,逆にデータ取得方法,特にレーザの走査方法にも展開があり,先進的な光学機器を含むハードウェアと,人工知能関連技術を含むソフトウェアの連携における最適化が現在も進んでいる.
キーワード:システム神経科学,顕微鏡,2光子イメージング,脳
本連載第1回2.では2光子多細胞カルシウムイメージングの二つの要素的技術について工学的な観点から分析した.これらの技術を用いることで実験者は生きた脳の神経活動を含む画像データを手にすることができる.その容量は筆者らが日常的に行う実験の現在の水準では,1時間の実験につき約30GByteとなる(8bit/pixel,512pixel×512pixel×30frame/s).では,この画像データから神経活動を読み取るにはどうすればよいだろうか.本稿ではこの問題について情報科学的な観点から分析する.そのために,本実験の目的まで遡って考えることから始めよう.
本連載第1回2.で見たように,2光子励起法では,個々のレーザパルスが標本上のある空間的に広がりを持った領域,つまりPSF(PSFは三次元的な広がりを持つ確率密度関数である)に存在する蛍光物質の近傍のカルシウムイオン濃度情報を集め,このPSFを時系列的に変化させることで,個のニューロンのスパイク活動(用語),1, 2, 3,…, を計測する.できるだけ多くのニューロンのを得るためにはこのデータの統計的構造に注目することが望ましい.ここではこの統計的性質を2点挙げてみよう.
(1)目立ったニューロン活動は時間的にスパースに発生する.(つまりは時間的にスパースである.)
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