巻頭言 情報・システムソサイエティの今

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Vol.102 No.3 (2019/3) 目次へ

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巻頭言

情報・システムソサイエティ会長 相澤清晴情報・システムソサイエティの今 Current Status of Information and Systems Society

 この2年間,情報・システムソサイエティ(ISS)の次期会長・会長として,FITをはじめとしたソサイエティの運営に関わってきました.せっかくの機会でもあり,ISSの現状についてまとめてみたいと思います.ISSは,規模としては,1万名を超える会員がおり,現在,3万名ほどの電子情報通信学会の中では,通信ソサイエティと並んで最大規模のソサイエティです.ソサイエティは,学会の活動を展開していく現場であり,三つの重要な事業があります.それらは,研究会,論文誌,大会です.言うまでもないことですが,それぞれの事業の裏側では,多くの関係者が働いています.

■研究会:現在,23の研究会があります.分野ごとに分かれている研究会活動が活発であることがソサイエティにとっては最重要です.2018年の1年間には,共催による重複も含めて2,592件の発表が行われました.1年の試行期間を経て,2018年度には紙媒体の技報を完全に電子化し,また,参加費・登録費制度を導入しました.会員は,全研究会のパッケージの年間登録も,安価に(年間1万5,000円)可能となりました.更に,2018年から新たに企業のスポンサーシップ制度も設け,研究会での情報提供機会を作り,企業と研究会参加者との接点作りに役立てようとしています.なお,MIRUなどの研究専門委員会を母体として開かれる年次シンポジウムも活況です.

■論文誌:英文誌と和文誌があり,2018年の1年間には,レターを含めて,それぞれ,849件,174件の投稿があり,厳正な査読を経て,381件と154件が採択されています.英文誌に関して言えば,投稿数の1位は中国で,日本は2位とかなり国際化しました.Impact Factor(IF)も有しています.これまでの活動において特筆すべきは,2017年から,英文論文誌に出版された論文は,過去のものも含めてJ-STAGE上で無条件でのオープン化を始めたことです.このために,ISSの英文論文へのアクセス数は数倍から10倍超に拡大し,引用数もそれ以前に比して50%増となり,IFも向上しています.(しかし,その後本会で追加料金を請求するオープンアクセスオプションの方針が決定されたため,ISSの在り方については,現在,検討の真っただ中にあります.世界的な動向も見ながら,議論を進めたいと思います.)

■総合大会,FIT:ソサイエティ全体のイベントとしては,3月の総合大会と9月のFITがあります.2018年には,それぞれISSでは,479件,493件の発表がありました.FITは,情報処理学会との共催のイベントですが,投稿数は横ばい,参加者数は減少傾向にあります.ISSから見て,研究会やシンポジウムといった分野を限定した会議の盛り上がりに対して,カバレージの広い大会は苦戦をしています.発表機会の少なかった昔に比べて,今は,様々な会合があり,大会の中身の見直しが必要です.

 ISSは,各分野の国内の優れた研究者コミュニティに支えられていると思います.一方,国際的な立ち位置でのISSの役割はどうなのか.つまるところ,ISSは“橋”であればいいと思います.コミュニティのために優れた研究の輸出や輸入の支援ができればよい.今や,国内の優れた研究は直接トップコンファレンスへ出ていきます.出しっ放しにせずに国内コミュニティへフィードバックの機会を積極的に設けるのが必要に思えています.

 学会とは関係なく,勉強会やセミナーなどの様々な機会が設けられています.SNSで募ると参加者が集まります.学会の活動が,これらと本質的に違うのは,主催が個人依存でなく,コミュニティであることでしょう.そのため,学会の活動は持続性があります.そう考えると,学会の価値はそのコミュニティであって,その活動が促進されるように支援することがソサイエティの役割だと思う次第です.


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