小特集 4. 多面体の展開図の数え上げと列挙

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折り紙の科学

小特集 4.

多面体の展開図の数え上げと列挙

Counting and Enumeration of the Developments of Polyhedra

堀山貴史

堀山貴史 正員 埼玉大学大学院理工学研究科数理電子情報部門

Takashi HORIYAMA, Member (Graduate School of Science and Engineering, Saitama University, Saitama-shi, 338-8570 Japan).

電子情報通信学会誌 Vol.102 No.4 pp.311-316 2019年4月

©電子情報通信学会2019

abstract

 展開図というと,小学校の算数の時間に,立方体や直方体,その他様々な多面体を,楽しみながらチョキチョキと切り開いたことを懐かしく思い出される方が多いだろう.また,立方体の11種類の展開図を見て,元の立方体のどの辺を切るかという,二次元図形と三次元立体の対応に頭をひねった方も多いだろう.本稿では,与えられた多面体に対して展開図は何個あるかを求める数え上げや,展開図を漏れなく重複なく全て求める列挙について述べる.

キーワード:多面体,展開図,列挙,数え上げ,アルゴリズム

1.は じ め に

 展開図は,多面体を切り開いて平面上に広げた多角形である.「展開図」や,本小特集の「折り紙」というキーワードから,子供の頃を懐かしく思い出される方も多いだろう.小学校で展開図を習ったときのことをおぼろげながら思い出してみると,実際に手を動かして多面体に慣れ親しむことで,多面体についての理解を深める狙いがあったのだろうと思う.多面体を構成する面や辺,頂点について理解し,三次元空間での面や辺の位置関係を体感しながら把握していった.二次元の展開図と三次元の多面体との間を行ったり来たりするのは多分に慣れが必要で,実は筆者は今でも,研究室の学生さんたちと一緒に実際に紙を折りながら試行錯誤をすることがある.また,紙だけでなく,Geofix(ジオフィックス)やPolydron(ポリドロン)といったおもちゃを買い込んで利用している.

 展開図は,小学校でのお勉強というだけではなく,私たちの身の回りの様々な所で利用されている.パソコンやスマホの箱は,紙を上手く折り畳むことで付属品も含めて丁寧にパッケージングされている.お菓子の外箱は,近頃は四角四面な箱だけでなく,その造形にハッと目をひかれるものが多く出てきている.(旅先でお土産を選ぶときに,外箱にひかれてつい自分用に買ってしまうことがある.)また,本小特集の執筆陣でもある上原・繁富のお二人との共同研究では,展開図の形で用意した微小プレート上で培養した細胞にプレートを折らせて三次元立体を構成する「細胞折り紙」において,細胞が折るのに適した展開図を定量的に評価しようとしている.

 本稿では,まず,多面体と展開図の関係から始めて,与えられた多面体に対して展開図は何個あるかを求める数え上げに関する研究について述べる.その後,展開図の個数を数えるだけではなく実際に漏れなく重複なく全ての展開図を求める列挙に関する研究について述べる.

2.展  開  図

 前章でも述べたように,展開図は,多面体を切り開いて,平面上に広げた多角形である.小学校以来の習慣で,多面体の辺に沿って切り開くことを私たちは言外に想定している.これを特に,辺展開と呼ぶ.一般には,辺以外の場所も含めて,面の上を自由に切り開いても,展開図を得ることができる.これを一般展開と呼び,辺展開と区別するが,話が発散しないよう,本稿では辺展開について詳しく見ていく.


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