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本会選奨規程第29条(電子工学及び情報通信並びに関連分野における教育実践(学会,教育機関,企業等での教育の実践)において顕著な成果を挙げ,当該分野の教育の発展に寄与した個人)に基づき,下記の2名を選び贈呈した.
データ工学教育の普及と発展に対する貢献
植村俊亮君は,京都大学大学院工学研究科修士課程を修了後,1966年通商産業省工業技術院電子技術総合研究所に勤務し,のちに東京農工大学,奈良先端科学技術大学院大学(現在は,同大学名誉教授)などの教授を歴任しました.この間同君は,データ工学に関する多数の研究発表,教科書執筆を行い,この分野の研究発展に深く貢献し,こうした功績により本会フェロー,情報処理学会フェロー,IEEE Life Fellowを授与されています.
1966年当時,諸外国では外部記憶の応用範囲が,ファイルからデータベースへと広がり,データ工学という分野が生まれつつありました.しかし,我が国の大学,研究所におけるコンピュータ利用は数値計算が中心であり,外部記憶とその応用についてはまだほとんど顧みられていませんでした.同君は,データ工学の基本概念の重要さを認識して,これを我が国に広めるために,多くの大学,研究集会などで講義や講演を行ってその重要さを啓発することを始めました.更に,それに同感した研究者との交流を広く進めるとともに,優れた教科書を執筆して,教育普及に深く携わってきました.また,データベースマシンの研究開発を指導し,情報技術に関する各種日本工業規格(JIS)の制定などに尽力しています.
特に同君は,「入門COBOL」(共著者 西村恕彦,初版1969,定本版2012),「データベースシステムの基礎」(1979),「入門データベース」(2018)などを代表作とする優れた教科書を執筆して,データ工学の正しい知識の理解と普及に貢献してきました.
以上,同君は,データ工学に関する優れた教科書の執筆と講義,講演などの啓発活動により,この分野の普及と発展に多大の貢献をなすとともに,学生や研究者,後進の育成に大きく寄与しており,その功績は極めて顕著であります.よって本会教育優秀賞にふさわしく,同君を推薦致します.
大学院講義と研究推進を連携させた工学教育の実践
宮保憲治君は,1974年電気通信大学電気通信学部応用電子工学科を卒業し,日本電信電話公社(現NTT)に入社し,電気通信研究所に所属となりました.以来,ディジタルデータ交換システム,B-ISDNシステム(ATMノード)などの研究開発に従事し,2003年東京電機大学情報環境学部情報環境学科教授に転じられました.大学での研究テーマは,次世代IPネットワーク,ディザスタリカバリ,クラウドコンピューティング,サイバー攻撃検出,センサネットワーク,可視光通信,癒やし通信等,多岐にわたります.
同君は,「情報通信とネットワーク技術」に関する多数の専門教科書を執筆,出版されています.それらを基に作成した講義資料を事前に提示し,授業ではアクティブラーニングを実践され,教育の活性化を図っておられます.また,企業研究所における経験をベースに,特許の書き方やサービス企画に関する著書を出版されています.大学院講義では,著書を活用し知的財産権に関する教育を強化されています.すなわち,研究の初期から特許取得を意識することの重要性を認識させ,特許取得へのインセンティブを高める教育をされています.また,企業研究所での実用化経験を生かし,4~5人単位のグループワーク活動を指導し,サービス企画を擬似体験させ,プロジェクト開発法を伝授するなど,実践的な教育指導を推進されています.研究室においては,いわゆる競争的資金によるテーマの研究実施において,初期段階から学生を参加させ,結果として多くの学生奨励賞やポスター優秀賞の受賞に導いておられます.これは,その教育・研究スタイルが高く評価されているあかしであります.また,同君自身も,所属大学から複数回にわたるベストティーチャー賞や教育賞を受賞するとともに,教育関連学協会から,功績賞を受賞されています.
同君の教育手法,実績は誠に卓越したものであり,本会の教育優秀賞を受賞するにふさわしいと確信し,推薦します.
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