解説 5Gシステムからの電波への人体ばく露の防護

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Vol.103 No.12 (2020/12) 目次へ

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 解説 

5Gシステムからの電波への人体ばく露の防護

Protection of Human Exposure to Radio Waves from a 5G System

佐々木謙介 大西輝夫 渡辺聡一 平田晃正

佐々木謙介 正員 国立研究開発法人情報通信研究機構

大西輝夫 正員:シニア会員 国立研究開発法人情報通信研究機構

渡辺聡一 正員:シニア会員 国立研究開発法人情報通信研究機構

平田晃正 正員:フェロー 名古屋工業大学大学院工学研究科電気・機械工学専攻

Kensuke SASAKI, Member, Teruo ONISHI, Soichi WATANABE, Senior Members (National Institute of Information and Communications Technology, Koganei-shi, 184-8795 Japan), and Akimasa HIRATA, Fellow (Graduate School of Engineering, Nagoya Institute of Technology, Nagoya-shi, 466-8555 Japan).

電子情報通信学会誌 Vol.103 No.12 pp.1234-1238 2020年12月

©電子情報通信学会2020

A bstract

 超高速・大容量通信などを実現する5Gシステムでは,従来の携帯電話システムよりも高い周波数の電波が利用される.5Gシステムの普及が想定される中,この新しい電波利用技術からの電波への人体ばく露の安全性について,国内だけでなく諸外国の関心も高い.本稿では5Gシステムを安心・安全かつ有効に利用するため,電波への人体ばく露の防護に関する研究動向に関して述べる.特に,電波への人体ばく露の防護のための指針値,並びに無線機器に対する指針値への適合性評価法に焦点を当てる.

キーワード:温度上昇,電力密度,電波防護指針,適合性評価,国際標準化

1.ま え が き

 2020年3月からサービスが開始された第5世代移動通信システム(5Gシステム)とは,超高速・大容量通信などを実現する次世代の移動通信システムである.5Gシステムでは,従来の携帯電話等の移動通信システムで利用されてきた数GHz帯に加え,我が国で利用される28GHz帯や現在検討されている40GHz帯など,従来の無線通信システムよりも更に高い周波数の電波が利用される.今後,5Gシステムの普及が想定される中,準ミリ波(本稿では6~30GHzとする)・ミリ波(30~300GHz)と呼ばれる電波への人体ばく露の安全性について,国内だけでなく諸外国の関心も高い.昨今においては,5Gシステムからの電波へのばく露と社会的な関心事項とを結び付けた,科学的根拠に乏しい情報(1),(2)がSNSやメディアに取り上げられ,社会・経済的な観点から大きな問題となっている.このような問題点に対して,工学・物理学・医学・生物学などの多岐にわたる科学的根拠に基づく電波への人体ばく露の指針・ガイドラインが,一般の人々に適切に理解されるよう,各分野の専門家による丁寧な取組みが必要となっている.

 我が国では人体に好ましくない影響を及ぼさない電波の強さの指針値等を電波防護指針(3)(6)で定めており,その一部を電波法令による規制として導入することにより,電波利用の安全性を確保している.2018年には5Gシステム等の準ミリ波・ミリ波への人体ばく露の安全性を適切に判断するために,電波防護指針の一部が改定され(6),電波法令による規制が2019年から施行されている.


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