解説 プロジェクションマッピング技術の現在

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解説

プロジェクションマッピング技術の現在

State-of-the-art Projection Mapping Technology

藤本雄一郎

藤本雄一郎 奈良先端科学技術大学院大学先端科学技術研究科情報科学領域

Yuichiro FUJIMOTO, Nonmember (Graduate School of Science and Technology, Nara Institute of Science and Technology, Ikoma-shi, 630-0192 Japan).

電子情報通信学会誌 Vol.103 No.4 pp.431-436 2020年4月

©電子情報通信学会2020

abstract

 建物や舞台にプロジェクタで投影を行い,幻想的な雰囲気や視覚的効果を創り出すプロジェクションマッピング技術(投影型拡張現実感,Spatial Augmented Reality)がはやって久しい.この10年間,この技術は,テーマパークや観光地,レストラン,アーティストのライブ等,全国のありとあらゆる場所やイベントに導入された.これらのプロジェクションマッピングは,主に動きのない物体に対し,あらかじめ作成し,位置合わせしたコンテンツを表示するものがほとんどであった.本稿では近年研究されている新たなプロジェクションマッピング技術について,三つの観点から紹介するとともに,これらの秘める更なる可能性について触れる.

キーワード:プロジェクションマッピング,拡張現実感,トラッキング,質感制御,作業支援

1.は じ め に
(これまでのプロジェクションマッピング)

 プロジェクションマッピングは,物体の形状や色を考慮して,プロジェクタにより,適切に映像投影(プロジェクション)することで,あたかも物体の見た目が実際に変化しているかのような視覚効果を生み出す技術である.現実世界に情報を重畳表示する技術である拡張現実感技術(AR: Augmented Reality)のうち,出力デバイスがプロジェクタであるものを空間型拡張現実感(SAR: Spatial Augmented Reality)と呼ぶが,本稿では,これとプロジェクションマッピングは,ほぼ同質の技術であるとみなし,呼び名をプロジェクションマッピングで統一する.

 筆者がこの技術に初めて触れたのは,およそ10年前,奈良先端科学技術大学院大学の博士前期課程1年時であった.プロジェクタとカメラから構成されるそのシステムは,カラー印刷された画像紙面を置くと,各部の色を変化させたり,強調させたり,更には消したりすることができるものであり,大きな衝撃を受けた.同大学のインタラクティブメディア設計学研究室(加藤博一教授)において,当時在籍されていた天野敏之元助教(現和歌山大学教授)が開発されたもの(1)であった.その頃,東京駅や大阪城,ディズニーランド等,全国各地にて,大きな建物などを対象とし,プロジェクタで投影を行うことで,本来建物が持っている形状を生かしながら,その見た目を変化させるプロジェクションマッピングが流行し,毎週末どこかに行けば,このプロジェクションマッピングが楽しめるようになった.しかしはやりものの常であるが,プロジェクションマッピング≒「建物などの見た目を変えるイリュージョンショー」として広く認知され,狭く理解されている面もあると思う.このような建物などの見た目を変化させる応用はすばらしく,筆者も好きだが,本来のプロジェクションマッピングは,これにとどまらず,プロジェクタにより,実存する物体の見た目を変化させたり,情報をある場所に関連付けて表示させたりする技術であることを再度強調しておきたい.この本質に立ち返ると,近年,この分野に大きな技術進歩が幾つかあった.その一例として,今までは建物等,動かない対象物の見た目を変化させるものであったが,動くものや形が変化するものを対象とする例も増えてきている.また,応用先も,様々な対象の見た目だけではなく,人の認知を変化させるものや,実世界の作業を支援するものなど,今なお拡大している.

 本稿は,まだまだプロジェクションマッピングは進化を続けていることを知って頂くために執筆した.続く章では,以下の三つの観点からこの発展を紹介する.


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