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毎年9月に慶應義塾大学新川崎K2キャンパスにて小学生対象に地デジアンテナの工作教室を実施しています.うちわの周りにアルミホイルを貼り円形ループアンテナを作って,被覆を剥がした同軸ケーブルとセロハンテープでつないで出来上がりです.約30分ででき,同軸ケーブルの加工をカッターで行うのがやや難しいですが,はんだ付けもしないので小学生低学年でも作れるのが利点です.
ここ数年続けていて感じたことですが,子供たちは自分たちで作ったアンテナをつないで液晶テレビが映ったとき,魔法を見たように目を輝かせて素直に喜んでくれます.自分で作ったもので電気機器が動作するようになることにびっくりするようです.集合住宅で共用アンテナが屋上にあったり,戸建て住宅でもケーブルテレビに加入していたりすると,アンテナそのものを見掛ける機会が失われているのでしょう.また携帯電話端末もアンテナがきょう体の中に入ってしまっているので,その存在を意識する必要がありません.ひょっとすると何人かの子はアンテナそのものの存在を知らないかもしれません.
私事で恐縮ですが,私はテレビ局の技術者だった父の影響もあり,今から約40年前にアマチュア無線の免許を取りました.また当時の我が家のテレビ受像機は真空管で,調子が悪くなると父が直していました.その姿を見てよくあんな複雑な機械を直せるものだと尊敬したことが理系に進むきっかけになったように思います.
先日,2018年度に実施された学習到達度調査(PISA2018)の結果が発表され,日本は「読解力」が15位に後退したことが大きく報じられました.その陰に隠れていますが,「数学的応用力」は6位(前回5位),「科学的応用力」は5位(同2位)と,世界トップレベルは維持したものの順位を落としています.国立教育政策研究所のWebサイトに掲載されている学習到達度調査のポイントでは,1日に1~2時間ICTを利活用する学生の得点は高く,4時間以上利用する学生の得点は利用時間の長さとともに急激に低下しています.ICTは便利で効率的な学習を可能にする一方,手を動かしたときと違って情報とデータに満ちたサイバー空間をのぞいただけでは新しい知見に感動を覚えることが難しいのではないでしょうか.学生のモチベーションを喚起する機会が,ますます重要になるように感じています.
本会も小中高生向けに科学教室を開催しています.これを実施するための募金も随時受け付けております(https://www.ieice.org/jpn/kagaku/bokin.html).先日発足したプラチナクラブでもジュニア向け教室,講演会講師を募集しております(https://www.ieice.org/jpn_r/activities/platinumclub.html?id=e).また今後学生向けのサービスを充実していくことを検討しています.理科離れを防ぎ,科学技術立国を堅持するために,皆様のお力添えを願えれば幸いです.
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