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本稿では,AI技術の研究開発のための計算インフラとして整備が進んでいるAIスパコンについて,国内外の事例を挙げるとともに,AIスパコンの要件として重要となる低精度演算性能,メモリバンド幅と容量,アプリケーション実行環境について概説する.また,AIスパコンの具体的な事例として,産総研が整備し,2018年8月から運用しているAI橋渡しクラウド(ABCI: AI Bridging Cloud Infrastructure)について概要を紹介する.
キーワード:人工知能,スーパコンピュータ,クラウド
人工知能(AI),特にディープラーニングに代表される機械学習の計算では,データから学習によってモデルを作成(学習フェーズ)し,学習後のモデルを用いて新たなデータに対して推論を行う(推論フェーズ).このうち,前者の学習フェーズでは,大量のデータをメモリにロードし,反復しながら精度を高めていく計算が必要となることから,膨大な計算能力が要求される.後者の推論フェーズでは,入力データに対して比較的少数回の演算を行うだけで済むことから,計算能力そのものよりは,データの入出力性能や電力当りの計算能力が求められる.こうしたディープラーニング向けの計算能力需要は,3.5か月ごとに倍増するとされている(図1).学習に用いるデータが多いほど精度の高いモデルが得られること,また,まだまだ未開拓の応用分野・データも膨大な数に上ぼることから,AI技術に関わる計算能力需要の指数的増加は今後も続くことは確実である.
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