巻頭言 オンライン化とグローバル化の下での持続可能な編集事業に向けて

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Vol.104 No.11 (2021/11) 目次へ

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巻頭言

オンライン化とグローバル化の下での持続可能な編集事業に向けて Toward Sustainable Publishing under Online and Globalization編集理事 笠原正治

 ソサイエティの英文論文誌に編集委員として関わらせて頂いてから論文誌編集関係の複数の役職をさせて頂く機会に恵まれ,現在は編集理事をさせて頂いています.以下,本会の編集事業の状況について簡単に御紹介致します.

 本会の編集事業は会誌事業と論文誌事業の二つから成ります.会誌は1917年6月号の創刊から数えて105年目を迎え,電子情報通信に関する最新の理論や技術の情報を会員の皆様にお伝えしてきた伝統ある出版物です.掲載内容は会誌編集委員会で丁寧な審議を経て決定され,基礎理論・通信・エレクトロニクス・情報システムの幅広い分野をカバーするとともに,分野横断的な話題についても積極的に取り扱っています.現在は紙媒体に加えてオンライン版のサービスも開始し,Web上のオンライン公開や会誌アプリを提供することで,いつでもどこでも気軽に読めるようなサービスを展開しています.一方で会誌の発行は高コストな事業となっており,現在のサービスを継続的に行っていくことは難しく,持続可能な会誌事業のあり方を今後検討していく必要があります.

 論文誌事業につきましては,初期の頃は会誌の中に論文が掲載されていましたが,1968年に会誌と論文誌が分離し,1976年に英文誌が発刊されて現在の形となりました.現在は和文誌・英文誌に加えてレター誌も発行し,全て電子化・オンライン化されてPDFダウンロードで閲覧される形態が標準になりました.

 オンライン化によって論文の閲覧サービスは充実してきましたが,肝心の論文については和文論文誌・英文論文誌とも投稿数の減少傾向が近年顕著になってきました.和文論文の投稿数減少については,大学の理工系の業績評価で英語論文を重視するようになったことが大きいと考えられます.一方で論文の閲覧という観点では,和文論文の方が英文論文よりもはるかに多いダウンロード数を達成しています.これは,日本語で最新の情報を得たい読者が多いことを意味しており,電子情報通信技術の啓発や普及という意味では,和文論文誌は重要な学術情報発信媒体となっていることがうかがわれます.閲覧需要の高さに今後の和文論文誌活性化のチャンスがあるように思われます.

 一方の英文論文誌についてですが,以前は数少ない電子情報系の国際論文誌としてアジア圏を中心に海外からの論文投稿が多くありました.近年は近隣諸国や大手海外出版社の同様なカテゴリーの論文誌の発行が相次いでいること,本会英文論文誌のインパクトファクタがなかなか向上しないことなどが投稿数減少の原因と考えられます.論文誌のビジネスモデルについても,著者が掲載料を支払い,読者は会費の一部として論文誌代を払うという学会の会員サービス型から,著者には掲載料を求めない代わりに購読組織に高額な購読チャージをかけるタイプや,オープンアクセスジャーナルのように高額な掲載料を著者に課すタイプなど,様々な論文ビジネスモデルが現れ,財務的な観点からも論文誌マネージメントが大変重要になってきています.グローバル化の下での持続可能な論文誌事業のあり方は何か,オープンアクセス化やプラットホームの変更など,いろいろ御意見を頂きながら検討しております.皆様のお力添えを引き続き賜りたく存じます.

 最後に,会誌・論文誌とも,著者をはじめとして大変多くの査読委員・編集委員・編集委員会幹事団の皆様の献身的なボランティア活動のおかげで,最新かつ高品質な学術情報の発信が支えられております.関係者の甚大なる御協力に心から御礼申し上げますとともに.本会の編集活動に携わる皆様全員がボランティア活動を通して高い満足が得られるべく,更なる改善に向けて努力する所存ですので,皆様の今一層の御理解と御協力のほど,何とぞよろしくお願い申し上げます.


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