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新たな研究に取り組むとき,あるいは新たな事業に取り組むとき,まずは現状を分析し,課題,要望を推測し,戦略を練って計画に落とし込む.これは非常に重要なことであり,よほどの天才でない限り思い付きだけで勝てることはない.ただ,失敗しないために,あるいは失敗を恐れて,リスク分析ばかりを続けてしまい,知識だけがついていくものの,何も事を起こせない(起こさない)ケースに陥ることもある.それは誰々がやっていること,そのアプローチは既にとられている,差異化領域は何だと確実(といって,世の中に確実なことはない)に勝てる領域を探している間に,ちょっと工夫しただけに思われるが,新しく有効な方法が提案され,また出遅れるという経験をしたことはないだろうか? 正しく分析することは重要だが,まずは具体的にやってみることが大事ではないかと思う.
TTPと聞くと皆さん何を想像するだろうか.Tettei Teki-ni Pakuruの略である.あまり学会には適さないと思われるかもしれないが,決して他者の研究内容をコピペして発表することを推奨しているわけではない.それは単なる盗用である.徹底的にパクるためには徹底的に理解する必要がある.理解し,実行してみる.真似して実際にやってみて初めて見える世界があると思う.表に出てきているのは完成された情報であるからそれだけでは見えないことがたくさんある.模倣して実際にやってみるからこそ,その先にある課題が見えてくるのではないだろうか.
最初に分析ばかりするなと言っているではないかと指摘されるかもしれない.ただ,よくある分析は,それをやるのではなく,それ以外をやるためにどういうものがあるかの市場調査であって徹底的に分析していないことが多いと思う.したがって,やるなら徹底的にやるべきである.徹底的に分析すれば,必ず先が見えるかというとそんなに単純ではない.何かプラスアルファの情報や先人とは違う角度でのアプローチなどいろいろ取り組んでみないと早々アイデアは出てくるものではない.
現在はネットで簡単に調べることができ,大抵の情報を集めることができる.ちょっとした確認などにはネットは非常に便利であるし,学会等の論文もネット経由で簡単にアクセスできる.ただ,ネットにある情報は誰でも見ることができる.したがって,既に誰でも考慮していると思った方がよい.生きた情報は,やはり人から得られるケースがこの情報社会でも(情報社会であるからこそ)多分にあると思う.
レアな情報(とっても怪しい情報ではない)を得るには,古今問わず人脈ではないかと思う.公開された論文は洗練された文章と十分に正しいと確認された結果が掲載されていて,途中段階での失敗談は基本的には載っていない.もちろん,これも非常に重要な情報であるが,途中の苦労話や失敗談などはパブリックの場所ではなかなか聞くことができず,個人的に話している雑談の中に潜んでいると思う.何気ないヒントが雑談の中に隠れていて,立ちはだかる壁の突破口となることもある.
出会いはどのような場にあるのだろうか? もちろん仕事で出会って話すこともあるし,そこで新たな気付きが潜んでいる場合もあるが,同じ目的で話しているがゆえに手法が近しい場合がある.一方,学会は目的を異にしている場合が多い.このため,なかなか会話が合わないことも多々あり,特に狭い視野で聞いていると無駄な時間を過ごしてしまったと感じることもある.ただ,目的が違うと視点が違う,アプローチが違う,主張が違うと自分とは異なる能力を持った人と出会うことができる.知恵の輪を広げるために,研究会や総合大会などは参加して新たな交流を作るのが今だからこそ有益ではないだろうか.
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