巻頭言 変わっていくもの,残すべきもの

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Vol.104 No.4 (2021/4) 目次へ

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巻頭言

変わっていくもの,残すべきもの New Normal Style, Unchanging Style東京支部長 立元慎也

 今年の正月,近所の神社へ初詣に行ってきました.例年は元気のいい地元の方たちが鳥居の下で酒を振る舞いつつ,雑談を交わしながら正月気分を味わうのですが,今年は距離を置いて静かに挨拶を交わしただけでした.最初の緊急事態宣言から約1年,振り返ってみると,地元を活気付ける祭りやイベントも中止となり,多くの人々が集まってにぎわう雰囲気を一緒に楽しむ機会はほとんど失われました.全国においても多くの祭りやイベントが中止となってしまいましたが,今年は是非復活し,今後も継承していってもらいたいところです.

 この1年,私たちのライフスタイルは大きく変化しました.仕事や授業はオンライン会議で,買い物はネットショップで,映画やライブはネット配信で,というように,移動しないで済むという意味では非常に便利かつ効率的になったとも言えるでしょう.公共交通機関などは,通勤や通学にこそ時々使うものの,プライベートではほとんど使わなかったという人も多いのではないでしょうか.ライフスタイルの変化に合わせ,オンラインでのグループワークツールや雑談ツール,講演会や展示会を支援するツールなどが急速に発達し効率化されてきています.また,大規模なスポーツやライブイベントなどにおいても,超高速かつ低遅延な通信環境によって,スタジアムやステージ上の一挙一動に同化する臨場感や一体感をリモートからの参加者にももたらすことが可能になりつつあります.

 社会のオンライン化が進むことによって,仕事は効率的になり,生活は便利になり,エンターテイメントも多様な楽しみ方ができるようになっていきます.社会のこの進化をICTで支えることが私たち研究者や技術者の役割であり,日々その技術を磨いていくことが重要であることは言うまでもありません.一方で,その場に行くこと,その場にいること,その場の雰囲気や人と触れ合うこと自体に意味があることも多々ありそうです.全てをオンライン化することが目的ではなく,オンラインの場と現地で直接触れ合える場との調和のとれた社会を作っていくことが重要と考えます.

 東京支部では,例年,講演会やワークショップ,見学会,地域との連携イベントなど様々な企画を行っております.昨年はオンラインツールを活用することで講演会などにはリモートから多くの方々に参加頂くことができました.その反面,現地でのイベントの多くは残念ながら中止とせざるを得ませんでした.支部活動において,地域と連携した現地開催イベントは重要であり,中でもジュニア世代を対象とした教育イベントのように,技術の面白さを体感してもらう体験企画や,参加者同士が共同で作業するものづくり企画などは,現地で直接触れ合わなければ体験できない点が多々あります.特に共同でのものづくりにおいては,必要に応じて交代したり互いの作業を手伝ったりなどしながら一つのものを作り上げていくチームワークや,自分たちが作ったものが目の前で実際に動き出したときの達成感は,技術以外の面での教育効果も高いものであり,リモート主体の社会になればなるほど,このような体験を積むことができる場がより重要になるものと考えます.

 これからの支部イベントにおいては,ツールを活用したオンライン開催,触れ合いの場を提供する現地開催,更にはこれらを融合させたハイブリッド開催など選択肢が増える分,その内容や時代に合った方法を模索しつつ調和のとれたスタイルに進化させていければと思います.

 リモートで出会った気の合う仲間と弾む話を楽しんでいたら実は相手はAIだった.そんな時代もすぐそこまで来ています.


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