巻頭言 今後の大会,研究会の在り方について

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Vol.105 No.11 (2022/11) 目次へ

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巻頭言

今後の大会,研究会の在り方について How to Handle Future Conferences and Workshops企画理事 山本剛之

 新型コロナウイルス感染症が国内に広がって,早くも2年半が経過しました.当初はしばらくすれば収まるのではないかとの期待もありましたが,感染はいまだ続いており,現在は感染症対策を行いながらも,社会活動を進めていくフェーズに入ってきています.本会の活動も,オンラインでの会合が限定的だった状態から,感染症対策のため,大会や研究会,運営側の理事会,委員会まで一旦全面的にオンライン開催に切り替わり,新たにWebinarシリーズもスタートさせました.現在は,対面会合が徐々に再開されてきている状況で,大会も本年9月のソサイエティ大会まではオンライン開催でしたが,同じく9月に開催されたFITは現地とオンラインのハイブリッドで開催され,来年3月の総合大会もハイブリッド開催で計画が進められています.

 さて,対面会合が再開されてきていると上で述べました.ICT技術を対象とする本会としては技術的にはオンライン化を進めていく立ち位置にあると思いますが,今後,会合をどのようにしていくのがよいと皆様はお考えでしょうか.現状はオンラインである程度のことはできるものの,まだ不十分な点もあることが分かってきています.また,学会が開催する大会や研究会などには,成果を発表する場,新しい知識や情報を学ぶ場,関係者と議論する場,新たな人的関係を作る場など,複数の側面があり,会合の性格や参加者の目的によって受け止め方も異なってきます.例えば,新しい知識を得るためのセミナーや講演会は,聴講者にとっては移動時間不要で開催場所にかかわらず参加できるWebinarの方が望ましいという方向になってきており,実際にオンライン化で聴講者が増える傾向も一部では見えています.一方で,新しい人的関係を作る場という面では,オンラインではセッションが終わるとWeb会議が終了し,質疑の枠しか会話をする時間がないことから難しく感じている方が多いように思います.また,議論をする場という面でも,オンライン開催だと研究会などでの質疑が低調に感じるという話も出てきています.

 では,学会で新しいことを進めていくためには議論や新たな関係構築は必須なので,単に対面会合に戻す,若しくは対面会合+オンラインのハイブリッド開催にすればよいのでしょうか.現在のところ対面会合が必要なのは確かですが,今は,オンライン開催や以前の対面会合を振り返って,各会合の在りたい姿を改めて描き,今後を考える良いタイミングです.対面会合でも内包していた課題が,オンライン化で顕著になった部分もありそうで,課題の原因をオンライン開催だからで止まらずに深堀りし,根本を探っていくことも重要に思われます.例えば,質疑の件については,全般的に国際会議の方がオンライン開催でも活発な印象があり,参加者の発言のしやすさに違いがあるようにも感じられます.もともと日本人は周りを見て言動を決める傾向があり,オンライン化で周りが見えなくなったことで拍車がかかった可能性もありそうです.もしこの仮説が正しいとすれば,発言しやすくする仕掛けも何か必要ということになります.それぞれの会合に応じた対面会合,オンラインの利点を生かした運用を見いだしていければと思います.

 オンラインの技術も進んでいきますし,来年には大学入学からの3年間がオンライン中心の学生が研究室に加わり,大学での研究期間をオンライン中心に過ごした学生が企業に入ってくるなど,対面会合の経験が少ない人もこれから増えていきます.このような若い方々の意見も含めて,会員の皆様には大会や研究会などの在り方について忌憚のない御意見を挙げて頂くようお願い致します.誰もが発言しやすい環境を作り,本会が活発な議論の下,新たな価値を提供できる場になることを目指していきましょう.


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