編集室

　＊　本12月号小特集は「電子スピンの回路とシステムへの応用」と題し，荷電粒子のスピンというナノ世界の物理現象を巧みに利用することで，磁気記憶，磁気計測，量子演算など，実世界での応用に結び付けた例について解説しています．基礎研究と応用研究が密接につながった読み応えのある内容となっています．

　＊　電子スピンと聞いて思い出すのは，昨年（2021年）ノーベル物理学賞を受賞したイタリアのジョルジョ・パリージ博士によるスピングラスの理論研究です．電子スピンと磁性体の関係について，世界中の注目を集めたことは記憶に新しい方も多いと思います．そして，本稿を執筆している2022年10月は，ちょうど今年のノーベル賞の発表がなされている最中です．受賞される先生とは縁もゆかりもなくても，個人的には，世間一般の研究に対する関心が最高潮に高まるこの時期が，研究者であることのモチベーションが高まる気がします．また，今後受賞者らの研究が分かりやすく解説されている記事やテレビ番組などを目にすることになると思います．各メディアが難しい研究をどう分かりやすく説明するのかも興味深いイベントです．研究者としても，上手な説明方法を学ぶ重要な勉強の場であると思っています．

　＊　2022年も終わりに近づいています．今年は悲惨な紛争が勃発し，今もなお予断を許さない状況が続いています．また，インフレなどの経済問題も深刻化しているように，世界の情勢は不安定な方向に向かっています．一方，新型コロナウイルス感染症は収束に近づいており，人と人のコミュニケーションは正常化に向かっている状況と言えそうです．状況の改善に尽力頂いている皆様に感謝するとともに，2023年は明るい話題に満ちた1年となることを切に願います．