巻頭言 研究者 学会に集い 技術が発展

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Vol.105 No.2 (2022/2) 目次へ

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巻頭言

調査理事 塩本公平研究者 学会に集い 技術が発展 Researchers Meet at the IEICE,Technology Develops

 電子情報通信は,50年以上前にムーアが予測したとおりに,10年で約100倍の性能向上が続いてきました.ハード・ソフトが発展することにより技術開発効率も向上し,指数関数的成長が続いてきました.多量の情報がクラウドに蓄積され,世界中の人々に活用されるようになり,電子情報通信の発展は様々な分野の発展にも寄与しています.今日では当たり前となった技術でも一昔前には想像できなかったものです.人類や地球に対する挑戦的課題への対応も10年前の技術水準のままでは限られたものにとどまり,10年後にはもっと有効な対策が打てるようになっていることでしょう.

 電子情報通信技術の発展には学会は重要な役割を果たしていると思います.研究者が学会に集い,研究成果を発表し,他の研究者との議論を重ねながら研究を進展させてきたことと思います.本会の会員の方には,研究会で研究成果を発表し,他の研究者との議論を経て,フルペーパーの論文に仕上げた経験をお持ちの方も多いのではないでしょうか? このようなプロセスを経験することで若手研究者が成長してきたようにも思います.専門分野が細分化されると活発な議論が起きにくくなりがちですが,関連する分野の多くの研究者が集まり活発に議論することで技術が進展し,また,異分野の研究者が集まり議論することでイノベーションが起きやすくなると思います.

 研究者のキャリア形成においても学会は重要な役割を果たしていると思います.同じ環境の中に閉じ籠もったままでいると,研究者はやがて強固で重たい鎧をまとうようになり,それ以上成長するのが難しくなることもあるでしょう.今いる環境から飛び出して新しい環境で挑戦し,一皮むける経験をすることで,大きく成長できることもあるのではないでしょうか? 学会で他の研究者と交流する中で,キャリアの次の機会につながるような出会いもあるように思います.個々の研究者が様々な環境で経験を積みながら成長していくことで,社会全体も活性化していくのではないかと思います.

 また,海外,特に東南アジア諸国との研究交流は,日本の電子情報通信の発展には有効だと思います.国際共同研究,留学生の受入れや派遣,及び,教員や研究者の人事交流などにより,多様な価値観やグローバルな視点を養うと同時にキャリアの多様化も進むのではないかと思います.本会にはアジア諸国と欧州に国際セクションがあります.活力のあるこれらの地域の海外セクションを諸外国との連携の架け橋として,国際連携を促進することで,日本の研究力の向上につながるのではないかと期待しています.

 技術だけでなく倫理も重要です.誰でも情報発信ができるようになったインターネット,多量のデータを蓄積するようになったクラウド,人間の識別能力を超えた機械学習,分散的な台帳管理を可能とするブロックチェーンなど,使う人が追い付けないほどのスピードで進歩している技術があります.政治や経済など様々な観点から,歴史の教訓を踏まえて,人類の幸福のために新しい技術を活用していくことが求められます.国際的な枠組みも必要となるかもしれません.高い水準の電子情報通信の技術力がなければ,そのような枠組みも有効に機能しないように思います.米中が研究論文の質で1,2位を競っている中で,日本の研究力の低下を危惧する声を多く耳にするようになりました.日本の研究力の世界的な位置を高めるために学会ができることはたくさんあると思います.我が国の電子情報通信技術を力強く発展させ,人類と地球の持続的発展に優しく貢献することを願っています.


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