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電子情報通信学会は約24,700名の会員を有し,80以上の研究専門委員会を抱える非常に大規模な学会です.将来の社会を支える基盤技術や人材がそろっている学会と言っても過言ではありません.一方ここ10年,会員数の減少傾向が続いています.特に企業会員の減少に関して,石田前会長から「本会を産学連携の場としてリバイブさせるために,企業を中心とする活動の場」の方向性が挙げられ,企業イニシアティブ分科会の検討が始まりました.私は2021年度から本会の副会長を務めておりますが,本件について川添会長を中心に,水落企画戦略室長,関係理事と継続して議論してきました.
企業会員が増えるということは,学会が産業界にとって魅力のある組織であるということです.どんな学会が企業にとって魅力があるかどうかは,当然ながら,企業の側から提案しなければ分かりません.そのスタートが「企業イニシアティブ分科会」となります.
今回は僭越ながら,巻頭言の場を借りまして,学会の役割について私見を述べさせて頂きます.
①社会価値を実装する研究の場
現代は,SDGsやESGなどの社会が取り組むべき価値の目標を定め,それに企業や政府が応えていくところに産業が生まれる時代です.社会価値の実装要件を因数分解し,多様な分野の知見の組合せによる解決策を見いだすことで,初めて個別技術の目標も見えてきます.その実現のためには,多様な領域のテクノロジーを組み合わせ,横断的にパートナーと連携できるニュートラルな場が必要です.学会は,このような役割を担う場となることができるのではないでしょうか?
これは,個別技術の研究をおろそかにするものではありません.むしろ,更に活性化すると考えます.それは,社会価値を実装する視点を持つことで,新たな技術目標や,新しい技術シナジーが生まれるからです.
②企業・アカデミアの新たな人材交流の場
COVID-19が世界中で猛威を振るったこの2年,社会の考え方も大きく変わりました.今後,企業側はジョブ形に基づく働き方への変革が進み,複数の企業への兼業など,働き方や雇用関係が大きく変革されていくと思われます.
一方,大学では,リモートによる教育が制約を受けつつも可能であることが明らかになりました.物理リソース(キャンパスの収容規模,教育者数,場所等)の制約を超えて,大学のCapabilityが大きく拡大すると考えられます.社会人の再教育の機会も含め,研究開発の領域では,大学と企業間での人的交流が拡大していきます.当然のことながら,学会はアカデミアと企業の接点です.電子情報通信学会に社会価値を実現する軸ができたとき,人材交流の場としての学会の役割がますます発展していくものと思われます.
上記の大きな変化に対応する最初の一歩として,「企業イニシアティブ分科会」がスタートします.企業の課題認識や目標とする社会価値を起点として,業種や分野を超え,多様な技術専門性を持つ研究者や異なる企業が連携して,横断的な研究活動を行う場です.会員の皆様におかれましては,是非とも本活動への御理解と,積極的な御参加をよろしくお願い致します.
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