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耐量子計算機暗号の最新動向
5.
符号暗号とその安全性評価手法
Code-based Cryptography and Its Decoding Algorithm
本稿では,耐量子計算機暗号の標準化プロジェクトであるNIST-PQCの第4ラウンドの候補にも選定されている符号暗号とその安全性評価手法について解説する.まず,符号暗号の仕組みである線形符号について概説し,基礎的な符号暗号方式と安全性の根拠について述べる.更に,NIST-PQCの第4ラウンドの候補の暗号方式について紹介する.最後に,符号暗号の安全性評価に関する研究と今後の課題について説明する.
キーワード:符号理論,誤り訂正符号,McEliece暗号,Niederreiter暗号,ISD
符号暗号とは,符号理論に基づく歴史ある暗号方式である.1978年にRobert McElieceによってMcEliece暗号が開発されてから40年以上が経過するが,符号暗号は耐量子計算機暗号(大規模な量子コンピュータを用いたとしても解読が難しい暗号)であることから,量子コンピュータが台頭しつつある現代において再び注目を集めている.米国標準技術研究所(NIST)が実施する耐量子計算機暗号の標準化プロジェクト(NIST-PQC)において,符号暗号は最終候補にまで駒を進めている.
符号暗号は,符号理論における誤り訂正符号を応用した暗号方式である.符号理論に詳しくない読者のために,最初に符号暗号に必要な線形符号について概説する.
という表記によって位数がの有限体を表す.本稿では(バイナリー)とする.を次元の行ベクトルとする.のハミング重みとは,HWである.すなわち,に含まれる1の個数である.を排他的論理和(XOR)とする.の要素から成る集合を考えたとき,の任意の2要素について,のとき,を線形符号と言う.を符号長と呼び,の要素を符号語と呼ぶ.四つの符号語から成る符号長5の線形符号の例として,を考える.における任意の二つの符号語の和もまたの符号語となる.例えば,である.線形符号は,ビットの情報記号と誤り訂正のためのビットの検査記号の連結で表される.はであり,先頭2ビットは情報記号である.符号長,情報記号ビットの線形符号を-線形符号と呼ぶ.
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